韓国裁判所、尹大統領の拘束取り消しを認定 捜査に「疑問の余地」

韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領による戒厳令を巡り、ソウル中央地裁は7日、内乱首謀罪で起訴された尹氏の拘束の取り消し申請を認めた。尹氏側の代理人弁護士によると、7日以内に検察側が即時抗告しなかった場合、釈放されるという。また、中央地裁は高官犯罪捜査庁(高捜庁)が尹氏を内乱罪で捜査した過程についても「疑問の余地がある」との判断を示した。 尹氏側は、検察が拘束期限を時間単位で計算した場合、検察が起訴した際にはすでに拘束期限が過ぎていたと主張し、裁判所に拘束の取り消しを求めていた。また、高捜庁の関連法では内乱罪を高捜庁の捜査範囲としておらず、捜査や逮捕は不法だと訴えていた。 ソウル中央地裁は拘束期限について「(検察が主張する日数ではなく)実際の時間で計算するのが妥当」と尹氏側の主張を認めた。さらに高捜庁による捜査についても、関連法に明確な規定がなく、最高裁による判例も存在しないと指摘。「議論をそのままにして刑事裁判の手続きを進める場合、上級審での破棄事由や再審事由になり得る」として、この点からも拘束取り消しが妥当だとの判断を示した。 韓国の裁判所は捜査機関による容疑者の身体拘束の可否を、日本よりも厳格に見る傾向がある。 また、文在寅(ムンジェイン)前政権が2021年に検察の捜査権を分散することを目的に新設した高捜庁は、これまでも運用に関する法的規定の不十分さなどが指摘されてきた。今回の裁判所の決定は高捜庁による内乱罪の捜査自体に疑義を唱える内容で、検察側は今回の事件の公判維持について戦略の見直しを迫られる可能性がある。 一方、戒厳令を巡っては、刑事裁判と並行して尹氏の罷免の是非を判断する審理も憲法裁判所で進行中だ。憲法裁の審理はすでに結審しており、刑事事件における捜査資料は参考として扱われるものの判断には直結しないとみられ、今回の地裁の判断は影響しない可能性が高い。憲法裁の決定は来週中にも出るとの見方が出ている。 一方で、弾劾に反対する尹氏の支持者たちは歓迎の声を上げた。大統領官邸前に駆けつけた女性会社員のキム・シヨンさん(26)は「我々の主張がようやく認められてうれしい。一日も早く釈放されてほしい」と話した。尹氏が釈放されれば、支持者たちが勢いづく可能性がある。憲法裁が尹氏を罷免する決定をした場合、更にデモが激しくなるとみられ、警察は警戒感を強めている。【ソウル日下部元美】

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