犯行を認めていないのに「自白」供述調書 佐賀地裁、県警の義務違反を認める 正確な記載に努める義務に違反

佐賀県警の窃盗事件の取り調べを巡り、逮捕されて不起訴になった男性が県に対し330万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、佐賀地裁は7日、訴えを一部認めて県に1万1千円の支払いを命じた。男性が犯行を認めていないのに自白した内容の調書を作成したとして、正確な記載に努める義務に違反したと認定した。 判決理由で三井教匡裁判長は、供述調書に関し「実際の内容と異なった場合、究極的に裁判の誤判につながる恐れがある。できる限り正確に記載するよう努める法的義務を負う」との判断を示した。また、担当警察官は男性の明確な自白がないと認識していたのに、供述調書に「間違いありません」と自白する文言を載せ、異なる場面や文脈での言葉をつなぎ合わせ「犯行状況や自白に至る心理的変化を供述していたかのように記載していた」と指摘した。 その上で、警察官の調書の作成について「法的義務に違反し、適正手続きの保障や誤判防止の(男性の)期待権を侵害した」と結論付けた。男性が調書に署名押印しなかったことや、不起訴処分になった事情も踏まえて慰謝料額を決めた。 男性は2021年1月に逮捕され、取り調べを受けた。訴訟では黙秘権を侵害されたことなども訴えていたが、判決では取り調べ全体が違法と認めず、供述調書以外の主張は退けた。 弁護団は「判決は違法な点を認めているものの、不十分な認定」として控訴する方針を示した。県警監察課は「判決内容を精査した上で今後適切に判断したいと考えている」とコメントした。(取材班)

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