クライムサスペンスはやっぱり悪役次第だ。容疑者を強引に自白させる刑事とか、にっこり笑いながら正義をねじ曲げる検事とか、こんな連中がいたら嫌だなぁと思わせるキャラクターが続々登場。いつの間にやらハマってしまったのが「クジャクのダンス、誰が見た?」(TBS系)。 元警察官の山下春生(リリー・フランキーさん)とその娘の大学生、心麦(広瀬すずさん)は2人で穏やかに暮らしていた。だがクリスマスイブの夜、春生が殺されてしまう。ある男が容疑者として逮捕されるのだが、父が残していた手紙には、まるで予測していたかのようにその男は「冤罪(えんざい)です」と書かれていて―。 心麦は、相談相手として手紙に名前が記されていた弁護士の松風(松山ケンイチさん)を訪ねる。被害者の娘が容疑者の弁護を依頼するというひねりの効いた導入がナイス。父親の元部下で心麦とも親しい刑事(藤本隆宏さん)が何やら隠し事をしていたり、父娘と仲良しのラーメン屋のオヤジが誰かに脅されていたり、ねじれた人間関係が複雑に絡み合って、どのせりふにも裏の意味があるように聞こえてくる。 今のところ、正義の味方であるはずの警察や検察サイドに悪の気配がプンプン。まぁ、正義と悪の逆転はストーリーの定番ではあるものの、主人公を追い詰める設定としては効果的だ。心麦のアタフタっぷりと松風の冷静沈着さが味わい深い。 脇役の好演もドラマを引き締めている。リリーさんや藤本さんも絶妙だけど、個人的には雑誌記者の神井(磯村勇斗さん)がインパクト大。特ダネのためには手段を選ばず、挑発的言動で出会う人全てを不愉快にさせる。昨年「不適切にもほどがある!」で演じていた好漢・ムッチ先輩とは正反対のキャラで、すっかりファンに。 鍵は22年前に起きた一家惨殺事件にあることが最初から暗示されているものの、物語はなかなか解決に向かわない。悪の中ボスである検事の阿南(瀧内公美さん)のかなしい過去が丹念に描かれているけれど、肝心のラスボスは第6話まで顔を出さずじまい。 犯人ではないのに逮捕された死刑囚とその息子、事件を捜査した警察官とその娘、2組の親子を巡るドラマの決着やいかに。(ライター 篠原知存)