「入居審査が不安な方へ 希望の部屋に住めます」「訳ありのお客様ご相談ください」―。インターネット上で検索すると、こうした文言で身分証明書の作成などを持ちかける「アリバイ会社」と呼ばれるサイトがいくつもヒットする。警視庁は今年に入り、身分証の偽造を繰り返していたとして業者を摘発。捜査では、犯罪を助長しうるツールを提供する悪質ビジネスの一端も浮かび上がった。 警視庁保安課が今年1~2月にかけて摘発したのは、アリバイ会社「スマートハウス」。賃貸マンションの入居審査で提示する健康保険証を偽造したなどとして、詐欺や私電磁的記録不正作出・同供用の疑いで、リーダーの荒田直人容疑者(33)=福岡市=らが逮捕された。自宅などからは、ニセの社員証や保険証計100枚以上が押収された。 ■実在大手企業の名前も利用 いわゆるアリバイ会社とは、依頼者の要望に応じて源泉徴収票や社員証などの証明書の作成を行う業者を指す。風俗店勤務や無職など、物件の入居審査に通りにくい人が利用しているとみられ、インターネット上に乱立するサイトの中には「保育園対策」として、入園選考で有利になるように就労証明書を発行するとうたうものもあった。 今回摘発されたスマートハウスは、物件への入居審査対策に特化。風俗店従業員を顧客に持つ不動産仲介業者などから依頼を受け、保険証や社員証を偽造していた。 実在する企業の身分証などをまねて、プラスチックカードに依頼者の氏名や、審査に有利と考えられる会社名をプリンターで印字。管理会社からの問い合わせ対策として、登記はあるがホームページがない会社の名前が悪用されたほか、高額物件の契約では、実在する大手企業の名前が用いられたこともあった。 摘発されたメンバーの一人は、偽造証明書に記載した会社のホームページを「勝手に作成していた」などと供述。所有する10数台のスマートフォンを問い合わせ先に設定するなどして、管理会社や保証会社からの在籍確認にも対応する-という手の込みようだった。 ■「大手にしては…」疑念から防止