フィリピン大統領府は11日、ドゥテルテ前大統領(79)に対し、国際刑事裁判所(ICC)の逮捕状を執行したと発表した。ICCは、ドゥテルテ政権時に数千人の死者を出したとされる薬物犯罪取り締まりの「麻薬戦争」を巡り、人道に対する罪で逮捕状を出した。 ロイター通信によると、前大統領は首都マニラの空港に香港から到着したところを現地警察に逮捕された。前大統領は容疑者の殺害を正当防衛を除き指示したことはないとしている。ロイターが入手した令状の写しでは、前大統領は2011~19年に少なくとも43人を殺害した責任を問われた。長女のサラ・ドゥテルテ副大統領は父親が「今夜、オランダ・ハーグに移送される」と述べた。 フィリピンでは、22年の大統領選でマルコス氏が当選。同氏は副大統領候補のサラ氏と共闘した。政権発足後、両家の主導権争いが激化。サラ氏はマルコス氏らを殺害するよう暗殺者を雇ったと発言し、下院で今年2月、サラ氏への弾劾訴追案が承認された。上院での弾劾裁判や、5月に中間選挙が行われるのを前に、両家の対立は今回の逮捕で決定的になった。 前大統領は南シナ海の領有権問題で対立する中国との融和路線を進めたが、マルコス氏は日米豪やインドの協力を得て中国の軍事的威圧に対抗している。(岩田智雄)