【ワシントン時事】米移民税関捜査局(ICE)が、ニューヨークの名門コロンビア大の元大学院生で、パレスチナ自治区ガザの停戦を求める学内の抗議運動の先頭に立っていたパレスチナ系活動家を逮捕したことが波紋を呼んでいる。 支援者らは「言論の自由に対する攻撃だ」と声を上げているが、政権は「テロリストへの加担」として国外追放する方針。 米メディアによると、ICEの捜査官は9日までに、永住権(グリーンカード)を保持しているマフムード・カリル氏(30)を同大の学生寮で逮捕した。シリアの難民キャンプで生まれたパレスチナ人の血を引くカリル氏は、昨年夏にキャンパスで広がったイスラエルによるガザ攻撃への抗議運動の中心人物の一人だった。 イスラエルは2023年10月、ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの攻撃を受けて軍事作戦を開始。ガザでは4万8000人以上の住民が犠牲になった。 レビット米大統領報道官は11日の記者会見で、カリル氏について「米国で学ぶ機会や特権を悪用し、罪のない男女や子供たちを殺害したハマスのテロリストに加担した」と糾弾した。ただ、カリル氏とハマスが関係している具体的な証拠は示さなかった。 トランプ大統領はこれに先立ち、反ユダヤ主義的な行動をした留学生を強制送還することを可能にする大統領令に署名。SNSで「(カリル氏の件は)今後続く多くの逮捕の第1号だ」と警告した。 トランプ政権はコロンビア大に対し「ユダヤ人学生に対する継続的な嫌がらせ行為に何の対策も講じていない」として、約4億ドル(約600億円)の助成金を取り消す可能性も示唆している。 カリル氏は11日現在、南部ルイジアナ州の施設に収容されている。米メディアによると、米国人の妻は妊娠中。一方、ニューヨークの連邦地裁は最終的な判断を下すまでカリル氏の国外退去を見送るよう移民当局に命じている。