日本で暮らすカンボジア出身の男性が、母国で拘束された弟の解放を見返りに、民主派としての活動中止を余儀なくされた。所属団体を脱退し、フン・セン前首相に謝罪。その後、フン・セン氏の「アドバイザー」になった。カンボジアでは反体制派弾圧で同様のケースが相次いでおり、専門家は「懐柔を交えた新たな抑圧手法」と指摘する。(共同通信=上松亮介) 市民団体「在日カンボジア救国活動の会」のハイ・ワンナー元代表(38)は、母国の強権的な政権与党カンボジア人民党への抗議活動を日本で組織してきた。しかし2024年7月、フン・セン氏から名指しで批判され、カンボジアに住む弟は危険を感じ亡命を決意。8月、隣国タイに向かう途上で当局に拘束された。 関係者によるとワンナーさんは10月、フン・セン氏の「特使」として来日した人民党関係者らと東京都内で面会した。この時、謝罪する様子を撮影されたとみられ、フン・セン氏は動画を交流サイト(SNS)で共有した。ワンナーさんは11月、カンボジアでフン・セン氏に直接謝罪。弟は解放されたが、出国を制限されているという。