不正アクセス事件摘発10~20代が7割 中学生は2倍近くに増加、いたずらや金銭目的

他人のIDやパスワードを不正に使用する不正アクセス禁止法違反事件で昨年1年間に全国で摘発された259人のうち、約7割を10~20代が占めていたことが警察庁への取材で分かった。いたずらや金銭を得る目的で行っているとみられ、専門家は子供への早期のネットリテラシー教育の重要性を呼びかけている。 警察庁によると、昨年、不正アクセス禁止法で摘発された14~19歳は72人で、そのうち中学生は17人、高校生は39人だった。20代は105人で会社員などが48人、無職は23人だった。中学生は昨年の9人から2倍近く増えた。 ■管理の甘さにつけこむ 不正アクセス禁止法違反事件の摘発件数は563件。10~20代が関与した事件307件のうち不正に利用されたのはSNS(交流サイト)などの「コミュニティーサイト」や社内ネットワーク、ネットショッピングサイトが7割以上を占めた。犯行手口の多くは、利用者のパスワードの設定や管理の甘さにつけこんで入手したのが3割以上を占め、他人やフィッシングサイトから入手した手口も多かった。 今年2月には、楽天モバイルのシステムに不正アクセスし、通信回線を契約したとして、警視庁が不正アクセス禁止法違反容疑などで、14~16歳の男子中高生3人を逮捕した。他人のクレジットカード情報やID情報を海外のインターネットサイトなどで購入。対話型生成AI(人工知能)の「チャットGPT」を悪用して自作したプログラムを使い、楽天モバイルのシステムにログインし、機械的に回線契約を行っていた。回線は転売し、約750万円相当の暗号資産(仮想通貨)を得ていたとみられる。 ■あいまいな遊びと犯罪の境界線 セキュリティー会社「トレンドマイクロ」の成田直翔氏は、動機の1つはいたずら目的で「遊びと犯罪の境界線があいまいで、重大な犯罪に手を染めている認識が薄い」と指摘。もう1つは、金銭目的で「不正アクセスの手法などがSNSなどで出回り、技術的なハードルが下がっている。お金がない若者にとっては闇バイトと同様に簡単に金を得られる方法になっている」とする。 成田氏は、子供への早期のネットリテラシー教育と同時に、親が子供のスマートフォンについて閲覧やアクセス制限ができる「ペアレンタルコントロール機能」の利用も呼びかける。また、SNSで不正アクセスの手法などが出回っている点については「プラットフォーム事業者での対策が必要だ」とした。(大渡美咲)

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