死体遺棄事件で判決 一貫して無罪主張の元ホスト「証明され安心」

名古屋市のマンションで2023年に住人の遺体が見つかった事件で、名古屋地裁の大村陽一裁判長は17日、死体遺棄罪に問われた元ホストクラブ店員小山直己被告(24)に無罪を言い渡した。愛知県警の任意の捜査段階から一貫して無罪を主張してきた小山被告。判決後、報道陣に「やっていないことが証明されて安心しました」と語った。 23年11月20日、名古屋市中区新栄のマンションに住む古物店経営阿部光一さん(当時42)の親族から行方不明者届けが出された。その後、部屋のクローゼットから阿部さんの遺体が見つかり、県警は同月に内田明日香被告(31)=同罪と強盗殺人罪で起訴=を死体遺棄容疑で逮捕した。翌月には共謀したとして、内田被告の通っていたホストクラブで働いていた小山被告を同容疑で逮捕。24年2月には内田被告を強盗殺人容疑で再逮捕した。 小山被告によると、逮捕前の任意の取り調べは1日15時間に及ぶこともあったといい、「何度も(やったと)言われると自分がやったのかなと思ってしまう」と振り返った。また県警の取り調べでは「子どもみたいにいつまでも自分の嫌なことから目を背けているから、ホストをして、今こんな風に捕まっているんじゃないか」と言われたという。 逮捕後の勾留は300日以上続いた。 ■検察側主張の遺棄は「物理的に困難」 判決では、阿部さんが亡くなったとされる23年9月29日は、内田被告が部屋を出るまで死亡推定時刻から1時間以上あり、単独で遺棄した可能性も否定できないとした。 さらに内田被告の供述などに基づき、検察側が主張した10月4日に遺棄をするとしても、供述通りの方法でクローゼットに遺体を移動するには部屋のスペースが足りないため「物理的に困難」と指摘。判決は、内田被告の供述は「事件の核心部分について信用性を疑わせる事情もみられる」として、起訴内容を認定することは合理的な疑いが残ると結論づけた。 内田被告の供述に基づく遺棄行為がスペース不足で不可能なことは、小山被告の弁護人が再現をして公判で立証した。弁護人は「本来は検察がやるべきこと」と批判した。 愛知県警の桑原雅仁・捜査1課次長は「コメントしない」と答えた。(渡辺杏果)

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