「もしかしたら兄貴の本当の狙いは…」アントニオ猪木の実弟が振り返る「日本プロレス史上最大の謎」“舌出し失神事件” 42年目の真実

2022年、79歳で亡くなったアントニオ猪木。今なお熱烈なファンを擁する猪木だが、1983年ハルク・ホーガンとの「第1回IWGP決勝戦」で、プロレス界を揺るがす「大事件」を起こしている。「猪木舌出し失神事件」――プロレスファンの間で、いまなお語り継がれる、あまりに有名な事件だ。だが、その経緯は40年以上経ったいまも謎に包まれている。一体、あの時本当は何が起こっていたのか。そして渦中の猪木は、一体何を考えていたのだろうか。《NumberWebノンフィクション全3回の3回目/1回目、2回目を読む》 「当時の兄貴は、心身ともにギリギリの状態まで追い詰められていました」 アントニオ猪木の実弟・啓介氏は「舌出し失神事件」の日を回想するたび、苦い思い出がよみがえってくるという。 「兄貴が取り組んでいたアントン・ハイセルの事業が行き詰まり、その金策に追われる一方で、新日本プロレスの主力選手だった長州力やタイガーマスク(佐山聡)が団体を離脱する動きを見せていました。リングの上では決して弱ったそぶりを見せなかった兄貴ですが、相当に厳しい精神状態だったことは間違いありません」 アントン・ハイセルとは当時、猪木が経営していたブラジルのバイオ企業である。それまでは不要物として廃棄されていたサトウキビの搾りかすを、微生物によって牛の飼料に変えるという「夢のリサイクル事業」で、猪木はこの事業に巨額の資金を投入していたものの、経営はいっこうに軌道に乗らなかった。

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