空き家を狙った窃盗の被害が急増している。背景には空き家の増加があり、管理が行き届かない状況も問題となっている。家主に代わって防犯対策を担うサービスも出てきた。 「人が帰ってこないし、ゆっくり物色できるので」 福岡県糸島市で1月24日午前3時40分ごろ、2階建ての空き家からネックレスや指輪を盗んだ疑いで現行犯逮捕された男(51)=窃盗罪などで起訴=は、県警の調べにそう話した。捜査関係者によると、空き家を狙って1階掃き出し窓から侵入し、約50分間、室内を物色していたという。 現場近くで不審な軽自動車を見つけた捜査員が応援を呼んで待機。男が外に出てきたところで声をかけた。男は容疑を認めているという。 男は運送会社の派遣社員として郵便物などを宅配する仕事をしていた。「暖房の音がしているか、庭の草が生い茂っているかどうか」で空き家か否かを見極めていたという。男の配達エリアでは昨年から空き家が被害に遭った窃盗事件が10件程度あり、県警は関連がないか調べている。 県警幹部は「もともと留守宅が狙われていたが、空き家が狙われるようになってきた」と指摘する。空き家でも貴金属が置かれたままのケースは多く、被害に遭っても気づかれにくいことが背景にあるという。 空き家が狙われた事件は相次ぐ。 東京都足立区の空き家から現金約40万円が入った財布を盗んだとして、警視庁は18日、住居不定、職業不詳のベトナム人の男(34)を窃盗などの疑いで逮捕した。男は「ベトナム人の友人に誘われ、生活費がほしくてやりました」と容疑を認めているという。 綾瀬署によると、6年ほど前、この家に住んでいた90代の女性が施設に入所したため、空き家になっていた。近所の親族が定期的に訪ねていたが、昨年7月30日、雨戸が外されて室内が荒らされていることに気づき通報。財布はタンスの中にあったという。(鳥尾祐太、藤田大道) ■被害目立つ関東、東京除く6県で 空き家を狙った侵入窃盗事件は近年急増し、警察庁によると、昨年の認知件数は9314件で被害額は12億9039万円。この5年間で認知件数は3倍、被害額は4倍になった。