テレビ東京が2023年3月に放送した『激録・警察密着24時!!』について、BPO(放送倫理・番組向上機構)は18日、放送倫理上の問題があったとする見解を公表。番組では逮捕された4人のうち、3人が不起訴になったことに触れてなかったほか、事後に撮影した捜査員の会話や会議の様子を捜査中に行われていたかのように放送していた。 この問題をめぐって、テレビ東京は番組の打ち切りだけではなく、今後同様の警察密着番組も制作しない意向を示している。 ドキュメンタリー番組関係者は「密着系は何かが起きれば難しくないが、何も起きない日常をどう撮るか、これはかなり経験が必要」と語る。ドキュメント番組は日常をカメラで撮影するが、それをどう「使える」シーンにするか、それが密着系テレビマンたちの腕の見せどころだ。 番組関係者は「密着相手の特徴をどの日常シーンで表現するか。しかも限られた条件で成立させねばならない。取材対象者との関係が最も大切になってくる」と語った。 では密着される側はどう感じているのか。密着取材経験者たちに話を聞いてみた。お笑いコンビ・ソラシドの本坊元児は「やっぱ面白い人と思われたい。面白いコメントを残そうとすることがあっても、“あざとさ”ってやっぱり出る」と明かした。 2018年から「山形県住みます芸人」として活動、農業に挑戦する姿を密着取材された本坊は、車での移動中に本音をこぼしてしまったという。 カメラは回っていたが、雑談などオフっぽい雰囲気で会話をしていたときのことで「『THE SECOND』が始まって『本坊さん出ないんですか?』みたいな。東京でハートが折れて『もう漫才で食べられへん』となって、いまさら『漫才15年以上の賞を作りました』って言われても、賞レース作りましたの上で踊らされるの腹立ってきますわ。出ている人はすごいけど」と語った映像が使われたそうで「ビックリしました。オフやったんちゃうんかいみたいな」と振り返った。 ホスト歴20年以上、歌舞伎町「ROMEO」所属の48歳の現役ホスト伯爵さんは「お店終わってからもずっと一緒。終わってから『ご飯行きましょうか』と。ディレクターは飲んで酔いつぶれていた。僕が後輩とケンカしだして、ディレクターが気付いたのかiPhoneで撮りだした」と、どんな状態でも映像に残す執念に驚いたという。 さらに「泣きのシーン」ではディレクターも一緒に泣いていたそうで、「僕もウルウルってきているとき、我慢しちゃう。撮られてるのわかるので。(ディレクター見たら)泣いてくれていて『これは俺、素直に泣けるな』と泣いたりとかはあった」と振り返った。 みずからも密着取材をもとにした「ノンフィクション漫談」を得意とするお笑い芸人のコラアゲンはいごうまんは、張り込み取材に1日密着された際に「コロッケを食べながら待ってくれないか」とスタッフから相談されたという。 そのときは「なんでやろな」という思いがよぎったが、普段から張り込んでいる時に物をたべることがあるそうで従った。「オンエアを観たら、やっぱりそのほうがわかりやすい」と思ったそう。「昼間から夜までこんなおっさんが立っていたっていうより、コロッケをかじっている。『ああ、この人おなかすいたけど頑張って立っているんやな』っていうのは伝わる」と、納得したことを明かした。 ドキュメンタリーでの密着取材を受けた3人に「いまあらためて思うこと」について尋ねた。伯爵さんは「自分の生活リズム、生活しているスタイルを『こいつダメだろ』と客観的に見られた。性格が結構変わった。感謝が一番大きい」とコメント。 コラアゲンはいごうまんは、マネージャーに説教され号泣するシーンを放送されたが「あとから聞いたら(そのシーンが番組の)最高視聴率だった。わからないもんですね。自分が見せたくないところが、人からしたら興味を持っていただけるところ。やっぱり自分の姿は自分が一番見えていない」と回顧した。 本坊はカボチャの栽培をしている際、農業に詳しいスタッフがこのまま育てても失敗するのがわかっていながら、なにもアドバイスをしてくれなかったことがあったそう。「ジャーナリズムのいっちゃん怖い『助けない』っていう。いま思えば『楽にうまいこといってどうすんねん』という感じも、芸人としてある」としながらも、「さすがだなと思いながらも、人間としては信用してない」とぶっちゃけた。 最後に「記憶にござい……ます」で世間を騒がせた、元衆議院議員の宮沢博行氏にも話を聞いた。パパ活辞職からの出直し選挙に密着された宮沢氏は「納涼祭というか、夜店市をひと周りしたあと、ちょうど帰ろうと思ったら花火が上がった。その花火を見ながらアイスを食べているシーンを撮った。カメラマンも『これは!』と撮りたそうだったので、それは『あうん』の呼吸でやってしまった」と告白。 また「事務所に取材に来た若いカメラマンが、この場面いいんじゃないの?というときにカメラ置いたりしてるんで『おい! 何やってんだ』と。どこでポロポロっと本音の言葉や仕草があるかわからない。カメラは回し続けないといけない」と持論を展開した。 (『ABEMA的ニュースショー』より)