強硬な薬物対策「麻薬戦争」を巡り国際刑事裁判所(ICC、本部オランダ・ハーグ)に拘束されたフィリピンのドゥテルテ前大統領(79)が、5月にある中間選挙のうち、南部ダバオ市長選に立候補している。選挙管理委員会は有罪確定までは被選挙権があるとしており、当選すれば、海外の収容施設にいながら市長に就く可能性が浮上している。 フィリピンの中間選挙では、上院議員(全24議席)の半数や地方自治体の首長など、計1万8000以上のポストが争われる。3月28日には、地方ポストの選挙戦が公式に始まる予定だ。この日に80歳の誕生日を迎えるドゥテルテ氏は、かつて20年以上務めたダバオ市長への返り咲きを狙う。 マルコス大統領とドゥテルテ一家の対立が深まる中、ドゥテルテ氏は政治的な影響力の維持や拡大を狙い、昨年10月に立候補を届け出ていた。その後、今月中旬に逮捕され、ハーグへ移送された。 国内では、ICCによるドゥテルテ氏の拘束について意見が割れる。容疑者の殺害も辞さないとした麻薬戦争への責任を問うために「拘束は必要だ」との声がある一方、支持者らは「高齢者を拘束するのは酷だ」などとして釈放を求める。また、ドゥテルテ氏側は、フィリピンが2019年にICCを脱退したことから、逮捕や拘束は不当だと訴えている。 政治アナリストのロナルド・リャマス氏は、こうした背景から、市長選でドゥテルテ氏に同情票が集まる可能性が高いと指摘。仮に当選すれば、ドゥテルテ氏の次男が副市長として代理を務めると予測し、「ドゥテルテ氏支持派と反支持派の分断は深まるだろう」と話した。【石山絵歩】