海外に患者を送り込み移植手術をさせる「臓器ブローカー」は、逮捕されたのになぜ「被害者」を訴えたのか?

「海外移植で臓器売買か 都内NPO仲介 困窮ドナーに200万円」 「親族間装い 旅券偽造 臓器売買疑惑 ウクライナ人ドナーに日本語」 後に新聞協会賞を受賞する読売新聞の「『海外臓器売買・あっせん』を巡る一連のスクープ」報道は、2022年8月7日から始まった。 報道は継続的に行われ、「生体移植」「ドナー脳死証明『偽造』」といった派手な見出しが躍る。 そして、2023年2月7日、ついにNPO「難病患者支援の会」の実質的な代表者・菊池仁達(ひろみち)が逮捕された。 その背景には内部告発があった。キルギスで移植を受けようとしたT大学ラグビー部のコーチだった小沢克年、実際に移植手術を受け、一時は重体に陥った50代の女性、牧口美代子(仮名)、そして元スタッフの河崎晃(仮名)の3人が、菊池の渡航移植の実態を明らかにしたのだ。 河崎は2021年12月から菊池との会話を16時間にわたって録音している。牧口のドナーはウクライナ人女性で、親戚だと偽装するために偽造日本旅券まで作成されていた。河崎はそのパスポート写真も入手していた。そうした「証拠」が、読売新聞、NHK、さらには警視庁に提出された。 16時間のテープの記録を菊池は取り調べで突きつけられている。 私の取材でも、河崎は「完全に自分たちがやっていることは違法という解釈をしました。だから自首するつもりで警察に行きました」と述べている。 衝動的な怒りから告発に踏み切ったのではないことがうかがえた。 また小沢コーチは各メディアに実名で証言している。 「病人の弱みにつけ込む手法が許せない。誰かが声を上げないと今後、同じ被害者が出てしまう」(神奈川新聞、2022年8月9日付)

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