理不尽な殺害と訴え 「麻薬戦争」犠牲者遺族 フィリピン

【マニラ時事】オランダ・ハーグの国際刑事裁判所(ICC)に移送されたフィリピンのドゥテルテ前大統領が28日、80歳の誕生日を迎えた。 大統領在任中などの「麻薬戦争」で密売人の超法規的な殺害を命じた行為が人道に対する罪に問われ、今月中旬にICCで審理が始まった。犠牲者の遺族は時事通信の取材に殺害の理不尽さを訴え、ドゥテルテ氏に罪の償いを求めた。 「両手を挙げて投降する意思を示していたのに警察官らは発砲し続け、殺害した」。2017年、マニラ首都圏カロオカン市の集落で警察が展開した「取り締まり」で夫=当時(45)=を殺された女性(57)は涙ながらに説明し、「違法薬物に手を染めた過去はあったが、何でそこまで」と語気を強めた。遺体の右腕には銃創があり、左腕の骨はハンマーで打ち砕かれていたという。 同じ集落で18年、車を運転中の息子=同(33)=が射殺されたという女性(71)は「警察は銃撃戦になったため殺害したと言っているが、息子は銃を所持していなかった」と指摘。息子が違法薬物を使っていた可能性があったことを認めつつ、「殺す必要があったのか。逮捕してくれていれば、今でも会うことはできたのに」と言葉を詰まらせた。 2人の女性はいずれも、高齢のドゥテルテ氏があえて健康を保ち、できるだけ長い間、罪を償ってほしいと願っている。「愛する人を失ったのが昨日のことのように思えて、何年たっても忘れられない」。2人の涙が止まることはなかった。

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