麻雀牌をかき混ぜるジャラジャラとした騒音とともに、紙幣が何枚も飛び交う店内に、捜査員が大挙して踏み込んだ。そして、この店の名物である宝石があしらわれた牌は、証拠物として次から次へと段ボール箱へと押し込まれていき、16人を逮捕する大捕り物となった――。 2月26日、東京・上野の「麻雀Jewel(ジュエル)上野店」が、賭博場開帳図利の疑いで警視庁の摘発を受け、店の従業員や客らが逮捕されたのだ。同店は麻雀ファンらが、「日本一過激なルール」と口を揃える違法雀荘だった。 「警視庁は、客に賭け麻雀をさせたとして、責任者の男(31)と従業員5人を逮捕。また、賭博の疑いで20~40代の客の男女11人も現行犯逮捕されました。この中には、ゲストとして来店した人気の女流プロも含まれているとみられます。 一昨年の12月に開店以来、一月3000万円、総額4億5000万円を売り上げたと警視庁は試算しています。雀荘の摘発は通常、生安部の保安課が担当しますが、今回は暴力団対策課だったのが愁眉。同課は売上の一部が暴力団に流れたとみて捜査しています」(全国紙社会部デスク) ■摘発と黙認の境 ただ、公然と賭博が行われている雀荘は国内に数多と存在する。ところが、そのすべてが摘発の対象となっているわけではないという。 「テンピンと呼ばれる1000点100円というレートを境に警察の態度が変わると言われています。 テンピンの場合、1ゲームあたりの負け額は多くの場合3万円未満で収まるのですが、リャンピンと呼ばれるその倍のレートになると、負け額の上限も当然2倍になる。警察はテンピン以下のレートでの賭け麻雀については事実上黙認していますが、それ以上のレートについては厳格な態度をとっています」(前出・社会部デスク) 今回摘発されたジュエルのレートもテンピンだったという。にもかかわらず、なぜ摘発を受けたのか。来店経験のある現役雀士X氏が解説する。 「ここ5年ほど、基本レート自体はテンピンでも、特殊牌を使ったあがりの際に高額チップが発生するルールを採用している雀荘が増えていて、ジュエルもその一つでした。 例えば特殊牌によってチップの総数が2倍になったり、そもそもの点数が2倍になったりといった計算になるので、動く金額は通常のテンピンとは比べ物にならない。また、麻雀はMリーグのように東南戦という親が2周するルールで争うのが一般的で、1ゲームに1時間弱かかるものなのですが、ジュエルはその半分で決着を決める。プロ野球に例えれば、通常は9回まで行うところを5回で終了するイメージです。 1ゲームが20分程度で終わることが多く、回転が速いので動くカネも大きくなる。こういった業態を俗に〝ピン東〟と称するのですが、その中でもジュエルはえげつなく、一晩打って30万円負けたなんてざらに聞く話。警察に睨まれたのも無理はない」(現役プロ雀士・X氏) さらに前出の社会部記者は、「暴力団との関連が疑われたことや、SNSで堂々とイベント告知するなど、傍若無人な態度だったことも警察に睨まれた理由の一つ」とも指摘する。 ■興隆する「ピン東雀荘」