摘発恐れ出国の米コロンビア大留学生、なぜ当局に目を付けられたのか

(CNN) 米ニューヨーク市にあるコロンビア大学の大学院博士課程で学んでいたインド人の女子留学生、ランジャニ・スリニバサンさんが学生ビザを突然取り消され、連邦当局の拘束を恐れてカナダへ出国した。当局に追われた理由は、今も不可解なままだ。 連邦当局の捜査員らが初めて自宅の学生アパートに来た時、スリニバサンさんは電話で大学のアドバイザーと話していた。その前日に突然、学生ビザが取り消されたという連絡を受け、情報を得ようと必死になっていた。 スリニバサンさんはCNNとのインタビューで「驚きと恐怖を感じ、アドバイザーに『移民税関捜査局(ICE)が玄関まで来ている。それでも大丈夫だと言うのか。何とかして』と訴えたのを覚えている」と語った。 捜査員らは令状なしで2回来訪した。3度目に来た時は裁判所から立ち入り許可を得ていたが、スリニバサンさんはすでに出国した後だった。 スリニバサンさんにとって最大の疑問は、そもそもどうして当局がやって来たのかということだ。 スリニバサンさんは2~3カ月前に学生ビザを更新し、米国にあと5年間滞在する許可を得たばかり。移民規定に詳しくなかったわけではない。修士課程ではフルブライト奨学生として米ハーバード大学に留学し、その後2年間の帰国義務でインドに戻ってから再入国した経緯がある。 今年2月には博士課程修了にもめどがつき始め、受け持っている学生の論文を採点したり、学術誌の締め切りを心配したりしていた。1年近く前に抗議デモの巻き添えになったことなど、すっかり忘れていた。 昨年4月のある夜、職場スタッフとのピクニックから学生アパートへ帰ろうとした時のこと。パレスチナ自治区ガザ地区での戦闘をめぐる反イスラエルデモの鎮圧作戦に巻き込まれた。 スリニバサンさんはガザで戦闘が始まり、激しい抗議デモが広がる前からしばらく大学を離れていて、米国へ戻ったばかりだった。「その日に何が起きるか、私たちはよく知らなかった。近所の周りがバリケードですっかり囲まれていた」と、スリニバサンさんは振り返る。住人であることを証明できず、アパートのある通りまで帰らせてもらえなかったため、抜け道を探して歩き回った。 やがて「200人ほどの警官がこちらへ襲いかかるような形で、大混乱になった」という。小柄なスリニバサンさんは自力で脱出できず、大勢の集団とともに警察に拘束された。 本人によると、数時間拘束されたものの、指紋を採取されたり逮捕の手続きを取られたりすることはなく、釈放前にニューヨーク市警から「歩行者の通行を妨げ」「デモ解散に応じなかった」として2通の出廷命令書を渡された。2通とも、出廷に応じる前にボランティア弁護士からの請求で取り消された。つまり、スリニバサンさんに関してはなんの前歴も残っていないはずだった。 ビザ更新の手続きでも、取り消された出廷命令書のことは申告しなかった。 ところが国土安全保障省(DHS)は、スリニバサンさんのビザを取り消した理由を問われ、出廷命令の申告がなかったと説明した。 本人がビザ取り消しの連絡を受けた時点で、そのような説明は一切なかった。 「私はうそをつくつもりなどなかった。もし間違いがあったなら、喜んで当局に弁明していた」と、スリニバサンさんは主張する。 しかし弁明の機会は与えられなかった。 ニューヨーク市は移民らの「聖域」都市として、連邦当局による不当な法執行を防止する条例を設けている。それにもかかわらず、連邦当局がどうして市の命令書データを入手したのかも判然としない。 DHSが出した報道発表の題名には、「(イスラム組織)ハマスとテロ活動への支援でビザ取り消しとなったコロンビア大の学生が、CBP(税関・国境警備局)ホームアプリを使って自主国外退去」とあった。CBPホームはスリニバサンさんが出国する前日に導入されたアプリで、不法移民が出国の意思表示をするための機能がある。 ノーム国土安全保障長官もX(旧ツイッター)に、「コロンビア大のテロ支援者がCBPホームを使って自主退去したことは喜ばしい」と書き込んだ。 担当弁護士は当局の発表を「まったくのうそ」と一蹴(いっしゅう)し、政権側はスリニバサンさんをほかの学生たちへの見せしめにしたがっていると非難した。 スリニバサンさんも、同アプリの存在さえ知らず、インストールもしていなかったと主張。「私はテロ支援者でもないし、親ハマス活動家でもない」と反論している。 これまで5年間を費やした博士課程は、5月に修了する予定だった。コロンビア大学の在籍資格を取り消されたが、大学側がなんとか撤回してくれるのではと希望をつなぐ。その一方で、「コロンビア大は私を守ってくれるべきだったと思う」「世界中から最も優秀な人材を呼び集めるなら、その人たちを守るのが務めだ」と主張した。 スリニバサンさんの専門分野は都市計画だが、今は遠い将来の計画など考えず、「博士号を取りたい。汚名を晴らしたい」という二つの目標に集中しているという。

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