8日、参議院外交防衛委員会において、日本維新の会の柳ケ瀬裕史議員が中国の反スパイ法を巡って議論した。 柳ケ瀬議員は、中国の反スパイ法で起訴されたアステラス製薬の日本人従業員と中国の金杉大使が領事面会をしたという報道を受けて以下のように質問した。 「どこまで言えるのかということはあると思うが、政府として、当該従業員の方の公訴事実と罪状は何であると把握しているのか? そもそも、その従業員の方ご本人も認識されているのか? また、中国側からそういったことが明らかにされているのか?」 これに対し外務省の岩本桂一領事局長は「これまで中国側はこの方がスパイ活動に従事した疑いがあり、中国の刑法及び反スパイ法に違反したとして2023年3月に拘束した。そして、昨年8月には起訴したと対外的に説明している。これ以上の詳細については現時点では明らかになっていない。また、この方と中国当局との間で控訴事実等についてどのようなやり取りがなされているかについては承知していない。中国側が詳細を公表していない理由について日本政府として答えることは難しい状況にある。こうした状況を踏まえ、政府としては、これまでも様々なレベルや機会を通じて、中国側に対して拘束理由を含む司法プロセスの透明性向上を求めてきており、同時に、この方の早期釈放を引き続き強く申し入れていく考えだ」と回答した。 柳ケ瀬議員は「ぜひ、早期釈放を強く訴えていただきたいと思う。領事面会は本人にとっては唯一の光だと思うので頻繁にぜひ会いに行っていただき、しっかり続けていただきたい」とした上で、反スパイ法について以下のように指摘した。 「おそらく中国当局も控訴事実をわかっていないと思う。なぜなら、この反スパイ法の内容自体がそもそも不明確で、逮捕した捜査員個人のその場の判断限りということではないのかと思う。こういった事態は非常に危険だ。中国は最も基本的な人権条約である自由権規約さえ批准していない。自由権規約第9条第1項『全ての者は、身体の自由及び安全についての権利を有する。何人も、恣意的に逮捕されまたは拘留されない。何人も、法律で定める理由及び手続によらない限り、その自由を奪われない』。同第2項『逮捕される者は、逮捕の時にその理由を告げられるものとし、自己に対する被疑事実を速やかに告げられる』。この自由権規約すら批准していないのが中国だ。この自由権規約は、イラン、アフガニスタン、リビア、イエメン、ソマリアも締約国だ。実際担保されているかどうかは別としても、少なくとも締結している。つまり、これすら締約をしていない人権後進国が中国であるということは明らかだ」 さらに中国への渡航について「だから、私は前回の質疑の時も『こういった国に渡航するのは極めて危険である』と、そのリスクを外務省としてしっかり訴えるべきだということを申し上げてきた。改めて、このリスクについて、しっかりと訴えていくべきだと思うが大臣の見解を伺いたい」と質問した。 岩屋外務大臣は「政府としては、中国における拘束のリスクについては従来から様々な形で法人への注意喚起を行ってきた。特に、2023年7月の改定反スパイ法の施行を受けて、同法の解説に加えて、とは言っても運用は非常に不透明なところがあるわけだが、スパイ行為と認定され得る可能性のある活動の具体例を紹介するなどしてきているところだ。今後とも、こうした注意喚起をさらに強化していって、邦人の安全確保に万全を期してまいりたい」と回答した。 柳ケ瀬議員は「今中国に多くの方が観光で渡航されているが、多分、このリスクを把握されている方は極めて少ないと思う。外務省としては『ホームページ載せてるよ』ということはあるだろうが、残念ながら伝わっていないという実態がある。しっかりと警鐘を鳴らしていただきたいということを強く申し上げたい」と訴えた。 (ABEMA NEWS)