大阪・関西万博の手荷物検査場で「リュックサックの中に爆弾が入ってるねん」などと発言し避難誘導を余儀なくさせたとして、高槻市の80代男性が威力業務妨害の疑いで大阪府警に逮捕された。 産経新聞によると、男性は4月14日午前11時10分ごろ、万博会場西側ゲートの手荷物検査場で、警備員に自分のリュックサックを放り投げ爆弾が入っているなどと発言し、業務を妨害した疑い。 警察の取り調べに対して、男性は「運営を邪魔するつもりはなかったが、万博でテンションが上がり、遊び半分だった」などと供述し、爆発物は持っていなかったという。 不特定多数の人が集まる場所でのトラブルだけに、ケガ人がでなかったことは不幸中の幸いだが、そもそも「遊び半分」の行為であっても許されないのか。また、どこまでであれば許されるのだろうか。冨本和男弁護士に聞いた。 ●遊び半分でも威力業務妨害罪は成立する ーー今回のように「遊び半分だった」としてやった行為でも犯罪になるのでしょうか? 威力業務妨害罪(刑法234条)が成立すると考えます。 威力業務妨害罪の保護法益は人の業務活動です。ここでいう業務とは、人が社会生活を維持する上で、反復・継続して従事する仕事です。 威力は、人の意思を制圧するに足りる勢力を用いることです。要は、人が作業の続行をちゅうちょするような行為です。 警備員の手荷物検査が業務であることは言うまでもないでしょう。 報道によると、警備員に自分のリュックサックを放り投げて、爆弾が入っているなどと発言したということです。 大の大人の発言なので、警備員としては「本当かもしれない」「一般客に危害が生じないようにしないといけない」と思うのが普通であり、手荷物検査の続行を中止せざるを得ません。 したがって、威力を用いて人の業務を妨害したといえ、本人が遊び半分であろうと威力業務妨害罪は成立します。 威力業務妨害罪が成立する場合、3年以下の懲役または50万円以下の罰金刑を科される可能性があります。 ●軽いイタズラでも「軽犯罪法違反」の可能性も ーー「遊び半分」の行為はどこまでなら許されるのでしょうか? 「遊び半分」であることが誰の目にも明らかな場合、たとえば誰が見ても水鉄砲と思われるものを警備員に突き付けた場合は、威力を用いたとまでいえず、威力業務妨害罪が成立しないかもしれません。 しかし、それでも、イタズラによって人の業務を妨害したとして、軽犯罪法違反(1条31号)になる可能性があります。 軽犯罪法違反になる場合、拘留または科料といった刑を科される可能性があります。 【取材協力弁護士】 冨本 和男(とみもと・かずお)弁護士 債務整理・離婚等の一般民事事件の他刑事事件(示談交渉、保釈請求、公判弁護)も多く扱っている。 事務所名:法律事務所あすか 事務所URL:http://www.aska-law.jp