日米通算200勝まであと2勝の巨人・田中将大が2軍で再調整を繰り返すなど、1カ月以上白星から遠ざかっている。そして、過去にも達成目前の“生みの苦しみ”を乗り越え、目標を達成した名投手たちがいる。 まずはNPB歴代トップの通算400勝を達成した金田正一から紹介する。国鉄時代に14年連続20勝以上を記録するなど、通算353勝を挙げた金田は、1965年の巨人移籍後も4年間で42勝を積み上げ、400勝まであと「5」に迫った。 だが、69年は6月までにリリーフで2勝を挙げたあと、勝てない日が続く。長年の登板過多から過コレステロール症になり、手足にむくみができていた。ほかにも血管神経症、甲状腺機能減退症、食道炎を併発し、体はボロボロだった。 「もうダメかと思った」ほどの苦境のなか、金田は「あと3つぐらい勝てないわけがない」と自らを奮い立たせ、9月21日の阪神戦で、奇跡的な2安打1失点完投勝利。10月1日の大洋戦も7回1失点で勝利投手になり、ついに400勝に王手をかけた。 そして、10月10日の中日戦、3対1とリードの5回、先発・城之内邦雄に代わって、金田がマウンドに上がる。 金田はフォックスの一発だけの1失点に抑え、9回2死、最後の打者・島谷金二を二ゴロに打ち取った瞬間、前人未到の400勝が達成された。 勝利後、ナインの手で胴上げされたレジェンド左腕は「ほんまにうれしい。400勝できたのは、みんなの協力のお蔭や。ワシほどの果報者はこの世にいないだろう」と感激に打ち震えた。 実は401勝目のチャンスもあった。10月18日の中日戦に先発した金田は、5回を終わって7対2とリードも、6回1死満塁から押し出し四球を許したところで降板し、7回に追いつかれたため、ほぼ手中にしていた白星が消えた。 筆者は以前、金田氏を取材した際に“幻の401勝目”について尋ねると、「ワシはカッチリ400で終わって良かったと思っとる」という答えが返ってきた。確かに「401」より「400」のほうが記憶に残りやすい。 これからも400勝は、誰にも抜かれることのない不滅の記録として輝きつづけるだろう。