『キャスター』(TBS系)第5話では、警察発表の裏側が描かれた(※本記事ではドラマ本編の内容に触れています)。 警察官が起こした暴行事件を警察上層部が隠ぺいした。チーフディレクターの梶原(玉置玲央)がスクープをつかんだが、内部告発する予定だった赤坂南署の竹野署長(緒川たまき)は姿を見せず、会見で暴行事件の存在を否定した。 テレビで目にする警察発表。事件が発生すると、被疑者が逮捕されたタイミングで記者クラブを通じて発信される。重大犯罪や有名人、政治家が関わっている場合は、記者会見が行われることも多い。メディアにとって重要な情報源であり、警察関係者と人脈を築くことで捜査情報をいちはやく入手できる。しかし、一歩間違えれば、それはなれ合いに変わる。メディアは都合の良い情報だけを流し、隠ぺいの温床になり得る。 第5話は、今作が群像劇であることをあらためて思い起こさせる内容だった。テレビの制作現場は、多様な職種と役職で構成される。テレビ局や制作会社、派遣社員、フリーのスタッフがいて、プロデューサーや分野ごとのディレクター、それぞれのサブ、カメラマン、音声、編集など、プロの経験と技術で成り立っている。報道分野では、記者やカメラマンが取材し、ニュース原稿を作成する。作中の「ニュースゲート」では、メインキャスターの進藤(阿部寛)、総合演出の華(永野芽郁)、ADの本橋(道枝駿佑)のほかに、多くのキャラクターが登場するが、それぞれに役割がある。 スクープを潰されたと思った梶原が、社会部記者の安藤(菊池亜希子)とぶつかる場面があったが、よく言えば多様性、悪く言うと寄せ集めのチームでは、個々の利害が衝突して、組織のあつれきに一個人の志などひとたまりもない。テレビ局と警察は似ていないようで、組織の論理が勝ってしまう風土は案外似かよっているかもしれない。 事件をもみ消した見返りに竹野は左遷され、梶原は最初に被害者に事情聴取した刑事の深川(前田亜季)から話を聞こうとして、出入り禁止をくらってしまった。JBNの社員ではない梶原は、責任をとって番組をクビになる。何かあれば立場の弱い人間が切られるのは、世の常なのだろうか。裏で情報を集めていた進藤は自宅待機中の梶原と会い、参事官の村崎(手塚とおる)から情報提供を受けた。つないだのは安藤だった。