大阪地検検事正だった北川健太郎被告による「レイプ事件」で、被害者の女性検事が5月21日、会見を開いた。準強制性交罪に問われている北川被告は初公判で起訴内容を認め、謝罪したが、その後、無罪主張に転じている。女性検事は会見で北川被告から渡された手紙を公表し、「(事件が)発覚した場合、検察組織に対しても強烈な批判がある」「総長や検事長の辞職もあるかもしれない」などと「組織」を使って口止めしてきたと訴えた。 事件は2018年9月、北側被告の大阪地検検事正就任を祝う懇親会の後に発生した。部下である女性検事が泥酔してタクシーで帰宅しようとすると、北川被告が強引にタクシーに乗りこんで検事正の官舎に連れていき、抵抗できない女性検事をレイプしたとされる。北川被告は19年11月に辞職。女性検事はその後もPTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しみ、24年になって検察に被害届を出し、同年6月に北川被告は大阪高検に逮捕された。 北川被告は24年10月の初公判で起訴内容を認めて謝罪した。このとき女性検事は初めて会見して、 「もっと早く罪を認めてくれたら、新しい人生を踏み出すことができた」 と話していた。 だが、その後、北川被告は弁護人を変え、「同意があると思っていた」などと無罪主張に転じて、公判は止まったままだ。 ■「大恩ある検察組織」のため公にするな 5月21日の会見で女性検事は北川被告の直筆の手紙を公開した。手紙は北川被告が退職する直前の19年10月28日付で、罪を認めているとしか思えない内容が記されている。 この時点で、まだ北川被告の犯行は公になっていないが、手紙は「自白」するような記述から始まる。 〈今回の事件であなたに取り返しのつかない被害を与えたことを心から謝罪します。またその後の謝罪も十分ではなく、償いといえるものも全くしていないことも心から謝罪します〉 しかしその後は、事件を公にしないよう「口止め」を強要する内容が続く。 〈今回の事件が公になった場合、私は絶対に生きてゆくことはできず自死するほかないと考えている〉 〈大地検の検事正による大スキャンダルであり、発覚した場合、私のみならず検察組織に対しても強烈な批判があることは明らかです。総長や検事長の辞職もあるかもしれないと思ってます〉 〈大恩ある組織と職員をそのような目に遭わせることに私は耐えられません〉