「雰囲気が変わった」…事務局長がコカイン所持で逮捕!トー横キッズが語った『日本駆け込み寺』の異変

5月18日、東京都・新宿区・歌舞伎町を拠点に若者などの支援を行う公益社団法人『日本駆け込み寺』の事務局長、田中芳秀容疑者(44)が麻薬取締法違反の容疑で警視庁に現行犯逮捕された。 捜査関係者によると、新宿区・大久保の路上でコカイン1袋を財布の中に所持した疑い。調べに対して「自分で使うために所持していた」と容疑を認めているという。また、田中容疑者と一緒にいた20代の女性からも薬物反応が出たため、同法違反容疑で逮捕された。女性は日本駆け込み寺に相談をしに来た利用者だった。 ◆無表情で何を考えているかわからない 田中容疑者はもともと、トー横などを取材しているフリーライターで、駆け込み寺の関係者によると「3~4年ほど前から一緒に活動をするようになった」という。実際に駆け込み寺を利用していたというAさん(10代女性)は「人によって態度を変える印象でした」と言う。 「何度か話をしたことがありますが、無表情で何を考えているのかわからない人。ネットニュース等では“熱心に仕事をしていた”と書かれていましたが、押し黙っていることも多くて……違和感がありました。 私が最後に駆け込み寺を利用したのは2ヵ月前。タダでご飯を食べられる日に友達の男の子と一緒に行きました。田中さんは私には丁寧に接してくれたんですけど、友人には少し説教をするような感じで、気分が悪かったのを覚えています」(Aさん) 今回、多くのトー横キッズから話を聞くことができた。彼らによれば、今年に入ってから駆け込み寺の雰囲気がかなり変わったという。利用者だったBさん(10代男性)も「差別的だった。二度とあの団体には近寄りたくない」と語る。 「日によって、女の子しか入れない日があったり……未成年の女性しか入れない日もありました。年齢や性別で断られるのはむかつきますね」(Bさん) Bさんの話では、最近では利用者数が減少。同じく歌舞伎町にある『君を守りたい』(通称「きみまも」)を利用している人が多いのだという。今回の事件と関連があるのだろうか。 ◆親御さんからも信頼されていた 日本駆け込み寺の代表理事を務めている清水葵氏にも話を聞いた。田中容疑者については「薬物をするような人ではない」との回答が返ってきた。 「私が駆け込み寺に来たのが2年半くらい前。それ以前の田中さんについては存じあげませんが、普段は冷静沈着で相談にも熱心に対応している方でした。親御さんからの信頼もある人でした。薬物に溺れている様子はなく『まさか田中さんが逮捕されるなんて』とわれわれも驚いています」(清水氏) トー横キッズたちが話していた「差別的な扱い」については「理由がある」と言う。 「この年末年始、事務所内で『美人局をしないか』と勧誘する男性が現れ、一時的に男性の利用を禁止するに至りました。その際、女性のみの利用や、未成年のみ利用可能にしていたのは事実です。 歌舞伎町には反社と呼ばれる人が多くいるため、予防策として行いました。皆さんが安心して日本駆け込み寺を利用するうえで仕方のない判断です。今はこれらの制限は撤廃されています」(同前) 「雰囲気が変わった」というトー横キッズたちの指摘は、駆け込み寺を安心できる場所にするために利用制限をした運営側との単なる行き違いだったのか。 ◆「オーバードーズ用市販薬」と「違法薬物」の売人 田中容疑者と一緒に逮捕された女性は「田中容疑者から『オーバードーズをするくらいなら、コカインとか大麻を使ったほうがいい』と勧められた」と供述しているという。 歌舞伎町ではそんなに簡単に薬物へアクセスできるのだろうか。前出のトー横キッズたちも「薬の売人を見たことがある」と証言していた。「オーバードーズ用の市販薬と違法薬物とでは売人が違う」とキッズの一人は話す。 「トー横周辺で薬を売っているのは、30代くらいの黒帽子の男です。彼らが薬のシートをバラ売りして、それを使ってオーバードーズをしているキッズはいまだにいます。覚醒剤やコカインなんかは別のルートです。歌舞伎町のある通りにいる黒人の売人が違法薬物を扱っていると聞きました」 違法薬物の常習者たちによると、コカインは歌舞伎町では「ハナ」と呼ばれているという。試しにキッズに教えてもらった通りにいた黒人たちに「ハナはあるか」と聞いてみると「ある」と答えた。 歌舞伎町ではこれほどにも違法薬物との距離が近いのだ。田中容疑者は日常的に歌舞伎町に出入りしているうちに、どこか麻痺してしまったのだろうか。 5月25日、日本駆け込み寺は田中容疑者の逮捕を受けて声明を出した。職員である田中容疑者が相談者と個人的に連絡を取っていたことを重く見て、相談者との連絡に職員個人の電話を使用すること、連絡先の交換を禁止。相談内容は職員全員が把握できるようにして「再発防止のためのガバナンス強化・コンプライアンス体制の徹底を目指します」とした。 「被害者も加害者も救う」との信条で活動をしている日本駆け込み寺。東京都や新宿区から多額の補助金が交付されている団体だけに、こんな事件が起きると行政も対応せざるを得ず、今後の活動にも支障が出るだろう。 ミイラ取りがミイラになった、では済まされない。真に厳格な対応が求められている。 取材・文・写真:白紙緑

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