「反省坊主じゃ」理不尽カスハラ各地で横行 従業員任せの顧客対応がはらむ企業リスク

客からの理不尽な要求や暴言などカスタマーハラスメント(カスハラ)の防止に向けた動きが官民で強まる中、各地で被害が絶えない。京都では家電量販店で購入した商品にクレームをつけた男が、呼びつけた店員に丸刈りを強要した疑いで逮捕された。男の行為は言語道断とはいえ、店側の対応に落ち度はなかったのか。企業にカスハラ対策を義務づける法改正案が国会で審議中だが、「顧客リスク」への備えは今後も求められる。 4月4日夜、京都市南区の男(49)の自宅に家電量販店の男性店員の姿があった。「店で購入したバリカンが使えない」として男に新品を持参するよう要求されたためだ。京都府警南署によると、入れ墨を見せた男に「うちの組員やったら、すぐ坊主じゃ」「反省坊主じゃ」と脅され、右側頭部の髪の毛をバリカンで自ら刈った。その後、店員は落ちた毛の掃除もさせられたという。 署によると、当初販売したバリカンに不良箇所は確認されなかった。事件翌日に店員が署に被害を申告。5月22日に逮捕された男は「相手がそう言っているなら仕方がない」と供述したという。 ただ、クレームを受けて男宅に向かったのはこの店員1人だけだった。男の要求は明らかに理不尽だが、店側の対応にも疑問が浮かぶ。 ■淡々と冷静に対応を カスハラに関する厚生労働省の企業対応マニュアルは、こうした行為を「店舗外拘束型」に分類。「基本的には単独で対応しない」「店外で対応する場合は公共性の高い場所を指定する」といった対応例を示す。 日本ハラスメント協会の村嵜(むらさき)要代表理事は「高圧的な言葉や態度で、店員を自宅などに呼び出す行為そのものがカスハラに該当する」と述べ、厚労省マニュアルと同じく店員単独での対応を問題視。従業員の安全確保という観点からも「例え店側に非があっても、店舗以外の場所へ派遣すべきではない」と断じる。 さらに「基本的に感情論に付き合う必要はない。淡々と冷静に、できることとできないことを伝えるべきだ」と村嵜氏。その上で「できないことを執拗(しつよう)に要求される場合は110番するという手も、臆さず客側に伝えてもよい」とする。 別の「落とし穴」にも注意が必要だ。企業がカスハラ被害への適切な対応を怠った場合、被害を受けた従業員に損害賠償を請求される可能性もある。村嵜氏は「(謝罪などで)直接対応する社員に対しては十分な意思確認が必要。ここでの対応を誤ると、社内でのパワハラ事案に発展するリスクもある」と指摘する。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加