米コロラド州で1日に発生した、パレスチナ・ガザ地区で拘束されているイスラエル人の人質を支援する集会でエジプト国籍の男性が群衆に火炎びんを投げつけるなどしたとされる事件をめぐり、米国土安全保障省のクリスティ・ノーム長官は3日、この男性の妻と5人の子供が移民当局に拘束されていると明らかにした。 事件は、同州ボルダーにある人気の屋外スペース「パール・ストリート・モール」で発生。モハメド・サブリー・ソリマン容疑者(45)が、群衆に向かって「パレスチナを解放しろ」と叫びながら、火炎びん2本を投げ込み、12人がやけどを負ったとされる。 ソリマン容疑者は、憎悪犯罪、殺人未遂、暴行、爆発物使用の計4件の連邦法違反の罪で訴追されている。 ノーム長官はソーシャルメディアへの投稿で、「この凶悪な攻撃について、容疑者の家族がどの程度知っていたのか、あるいは支援していたのかを捜査している」とした。 ホワイトハウスもXで、「ユダヤ系アメリカ人に対する反ユダヤ的な火炎攻撃事件の容疑者で、不法在留外国人のモハメド・ソリマンの妻と5人の子どもが捕らえられ、現在、米移民関税捜査局(ICE)に迅速送還手続きのため身柄を置かれている」と発表した。 また、全て大文字で、家族は早ければ10日夜にも国外退去となる可能性があると強調した。 さらに、「モハメドの妻と5人の子どもに片道航空券6枚。最終搭乗案内は間もなく」とも投稿した。 移民法の執行は国土安全保障省の管轄だが、刑事事件の捜査は通常、連邦捜査局(FBI)と司法省、地元警察が担当する。 1日の事件では、、52〜88歳の男女4人を含む12人が病院に搬送された。軽症から重傷まで、けがの程度はさまざまという。 最年長の負傷者は、第2次世界大戦中のナチス・ドイツによるユダヤ人などの大虐殺(ホロコースト)の生存者だという。コロラド大学ボルダー校のユダヤ教超正統派グループ「チャバド」の責任者でラビ(ユダヤ教指導者)の、イスラエル・ウィルヘルム氏が、BBCがアメリカで提携するCBSニュースに話した。 警察が提出した宣誓供述書によると、ソリマン容疑者は犯行を認めており、1年前から計画していたと供述している。 ■娘が新聞社から奨学金、医学に興味と 国土安全保障省の当局者によると、ソリマン容疑者は2022年8月に観光ビザ(査証)でアメリカに入国したが、そのビザは翌年に失効。しかし、ソリマン容疑者は2022年9月に難民申請を行っていたという。 警察の捜査資料によれば、ソリマン容疑者は当局に対し、「計画について妻や家族とは一切話していない」と話している。また、妻と5人の子供に宛てたメッセージを保存したiPhoneを机の引き出しに隠してきたと供述。妻がその後、iPhoneを当局に届けたという。 これまでに、ソリマン容疑者の娘の1人が最近、コロラド・スプリングズの地元の新聞社から奨学金を受けていたことが明らかになっている。 奨学金申請書の中で、娘は「アメリカに来たことは私を根本的に変えた」と記し、「短期間でプレッシャーの中で働くことや急速に成長することを学んだ。何よりも、家族が変わらぬ支えであることを実感した」と述べていた。 地元紙ガゼットによると、娘は医学の勉強に関心を持っていたという。 同紙の人物紹介では、娘は「エジプトで生まれ、クウェートで14年間暮らした後、2年前にアメリカに移住した」と記されていた。 さらに同紙は、「娘が幼いころ、父親が歩行能力を回復するための困難な手術を受けた」と報じていた。 FBIによると、ソリマン容疑者は逮捕後、娘の高校卒業後に犯行を実行する計画だったと警察に供述したという。 ソリマン容疑者は2日、ボルダー郡の拘置所からビデオリンクで出廷した。出廷時間は5分未満で、オレンジ色の囚人服を着用し、起立したまま手続き上の質問に「はい」と答えたが、それ以外の発言はなかった。 次回の出廷は5日で、正式な起訴内容の提示と保釈審理が予定されている。 (英語記事 Family of Boulder suspect detained by immigration officers)