首都・東京の行方を決める都議会議員選挙が「6月13日告示、22日投開票」の日程で行われます。立候補者は平成元年(1989年)以降で最多の270人以上となる見通しで、国政与野党は7月の参院選の前哨戦と位置付け、総力態勢で臨む方針です。この記事では、都議会と都議選の仕組みや歴史、選挙の焦点に小池百合子知事の動向などをやさしく解説していきます。(時事ドットコム取材班、元都庁記者クラブキャップ 斉藤大) ◇「国家並み予算」127人がチェック 東京都は、日本の人口の1割強に当たる1420万人が暮らす世界有数の巨大都市。企業の本社も集中し、豊かな財政基盤を背景に、都の2025年度当初予算は一般会計で約9.1兆円、特別会計や公営企業会計を含めた予算は17.8兆円に及ぶ。これはスイス(14.7兆円)、スウェーデン(20兆円)といった国家予算に並ぶ規模だ。また、都の職員数は3万3000人。学校教職員や警察官などを含めると16万人を超える。 このため、都の事業やお金の使い道をチェックする都議会議員の定数は「127」と地方議会の中で最多。現在の女性議員は41人で現員(123人)に対する割合は33%と、都道府県議会の中で最も高い。ただ会派別の女性比率は、共産党(73%)や都民ファーストの会(34%)に対し、自民党(13%)、公明党(13%)、立憲民主党(16%)とかなり差が大きいのが現状だ。 ◇高い注目度、その陰で… 都議会議員の仕事の中心は、年4回開かれる定例会だ。都が提出した予算や条例案などを、事業分野ごとに九つある常任委員会で審議した上で、全議員が出席する本会議で議決する。東京都は国や他の自治体に先駆けた政策も多く、都議会の様子が全国ニュースとして大きく扱われることもある。 過去を振り返ると、知事がスキャンダルで追及される舞台にもなった。猪瀬直樹元知事は2013年に5000万円受領問題で、舛添要一前知事は16年に政治資金の私的流用疑惑で、都議会総務委員会の集中審議を受け、いずれも辞職に至った。開場を控えた豊洲市場の土壌から環境基準を大幅に上回る有害物質が検出された問題では、都議会は17年、地方自治法第100条に基づく強い権限を持つ調査特別委員会(百条委員会)を設置。既に退任していた石原慎太郎元知事らに用地取得交渉を巡る経緯をただした。 他の地方議会に比べて注目を集める一方で、審議がたびたび深夜にまで及んでいることはあまり知られていない。一般的に、地方議会の本会議や委員会の開会時間は午前10時だが、都議会は1943年に制定された規則で「午後1時開会」と定められている。このため、午後9時頃まで質疑が行われることも。さらに議事が紛糾すると、深夜、翌朝まで本会議や委員会が終わらないという事態になる。議員はもとより職員にも大きな負担となっており、「働き方改革に逆行している」(若手都議)との声も聞かれるが、抜本的な解消には至っていない。 ◇最多「定数8」の選挙区は? 次に都議選の仕組みを見てみよう。 全127の議席は、定数1~8の42選挙区で争われる。新宿区など23ある特別区は各区が単独の選挙区(定数1~8)。多摩地域は、12市がそれぞれ単独の選挙区(同1~5)で、6選挙区(同2~3)は複数の市町村で構成される。島しょ部は全体で1選挙区(同1)となっている。最多の定数8は人口92万人を擁する世田谷区。立候補予定者は20人程度で激戦となりそうだ。 都選挙管理委員会によると、今年3月1日現在の有権者数は1154万人。計画では、投票所は1865カ所、選挙ポスター掲示場は1万4226カ所に上り、都知事選と並び国内最大の地方選と言える。 投票率は1959年の70.13%をピークに徐々に低下。新型コロナウイルス感染が広がる中で行われた2021年の前回は42.39%と過去2番目の低さとなった。国政選挙に比べても低い傾向にある。 ◇60年前「黒い霧」で解散 他の道府県議選の大半は4年に1度、4月に統一地方選で実施されるが、都議選はこれから外れている。なぜなのか。 もともとは都議選も統一選で行われていた。しかし、1965年に議長選挙を巡る贈収賄容疑で自民都議15人が逮捕される「都議会黒い霧事件」が発生。リコール運動が広がる中、都議会は自主解散し、同年7月に出直し選が行われた。この選挙で自民は落選者が相次ぎ、最大会派の座を社会党(当時)に明け渡した。 これ以降、都議会単独の選挙が続いてきたこともあり、地方選挙ながら国政選挙並みに注目を集めてきた。12年に1度は今回のように参院選と同時期に行われることから「巳年選挙」とも呼ばれ、さらに関心が高まる。