「大川原化工機」えん罪事件国賠訴訟 警視庁と東京地検が上告断念 捜査の「違法性」認め賠償命じた東京高裁判決が確定へ

化学機械メーカー「大川原化工機」のえん罪事件をめぐり会社の社長らが賠償を求めた裁判で、東京都と国が最高裁に上告しないことを発表しました。捜査の違法性を認め、都と国におよそ1億6600万円の賠償を命じた東京高裁の判決が確定することになります。 神奈川県横浜市の化学機械メーカー「大川原化工機」の大川原正明社長ら3人は、軍事転用できる噴霧乾燥機を中国などに不正輸出したとして逮捕・起訴されましたが、初公判の直前に起訴が取り消されました。 無実が明らかとなった大川原社長らは、都と国に賠償を求める訴えを起こし、東京高裁は先月28日、警視庁公安部と東京地検の捜査の違法性を認め、あわせておよそ1億6600万円の賠償を命じる判決を言い渡しました。 最高裁への上告期限のきょう、警視庁と東京地検が上告を断念したことを正式に発表し、それぞれ原告側に謝罪しました。 警視庁は、「本判決を重く受け止めるとともに、本事件における捜査によって、本件訴訟の原告をはじめとする当事者の皆様に多大な御心労、御負担をおかけしたことについて深くお詫びを申し上げたい」とするコメントを出しました。 東京地検も「検察官の勾留請求及び公訴提起が違法と判断されたことについて真摯に受け止めている」としたうえで、「関係者の皆様に多大な御負担をおかけしたことについて、おわび申し上げたい」とコメントしています。 捜査の違法性を認め、賠償を命じた東京高裁判決が確定することになります。 さらに警視庁と東京地検は、大川原社長ら関係者に対して、できるだけ早期に直接謝罪する意向を明らかにしました。そのうえで、捜査の主体となった警視庁では、副総監をトップとした検証チームを立ち上げる方針で、東京地検についても、上級庁である最高検察庁の次長検事が責任者となり、最高検公安部が中心となって検証を行うということです。 都と国の上告断念の発表を受け、会見を開いた大川原正明社長は、「国賠訴訟の中で捜査がおかしかったという証言をしていただいた3名の現役の警察官の方、それが大きな力になった。やはり社員、また社員の家族たちに謝罪をぜひしていただきたい」と話しました。 また、大川原社長とともに逮捕・起訴され、勾留中に見つかった胃がんが原因で亡くなった相嶋静夫さん(当時72)の長男は、「結果が出て、うれしい部分もあるが、かえってむなしい部分もある。父が入院して亡くなるまでわずか3か月間。その過ごし方はとても悔やまれます。まったくなかったものを警視庁の捜査員が作り上げた。時間がたっても怒りは消えない。できるなら時計を戻してもらいたい」と涙ながらに語りました。 原告側は検証について、「透明性と公平さが担保された検証でないと真実は出てこない」などとし、第三者による検証を求めています。

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