発端は1日3000人の不法移民の摘発…米・ロスの抗議デモ過激化の原因はトランプ大統領? 専門家が“今後のポイント”解説「トランプ政権がまだ発していない法律がある」

アメリカ・ロサンゼルスで過激化した移民取り締まり政策への、抗議デモでの衝突。夜間の外出禁止令に応じなかった200人以上が逮捕されるなど事態収束の見通しは立っていない。 この騒動の背景について、アメリカ政治に詳しい上智大学の前嶋和弘教授に聞いた。 「アメリカにおける移民の考え方だが、不法移民と合法移民の差は極めて少ない。父・母が非合法移民であっても、子どもがアメリカで生まれたらアメリカ人。父や母を強制的に追い出すことは人道的にもできず、アメリカ人が路頭に迷うことになる。そして非合法移民が経済の下支えをしているのも間違いない」(上智大学・前嶋教授、以下同) そもそもが「移民の国」であるアメリカ。そのため、排除ではなく共存の道を進んできた。 「全米の300くらいの都市は聖域都市『サンクチュアリシティ』で、不法移民・非合法移民の摘発をしない政策になっている。ただ大きなポイントとなるのは、聖域都市というのは都市部で、民主党支持者が強いところ。一方で、トランプ支持者の多くが都市部以外で、そもそも非合法移民を見たことがない、自分の周りにいない」 そうした都市部以外の人々に対して、「不法移民に仕事を奪われる」「犯罪者が増える」と訴え、印象付けたトランプ大統領。ところが実際には、失業率は1960年以降、最も低い水準で、アメリカ生まれのアメリカ人の方が犯罪率が高いというデータもあると前嶋教授は指摘する。 「ここ数日、トランプ政権は1日3000人の不法移民の摘発というノルマを課している。反発が起きたら強く対応しようと、トランプ側におそらくプランがあったはずだ」 そんな中、一部の過激化したデモ隊に対してトランプ政権がとった手段が、州兵の派遣だった。州知事の要請なく州兵が配備されたのは、60年ぶりのことである。 「非常に大きな問題になった場合には連邦政府の下に置いて対応することも可能だ。トランプ大統領はこれを狙った」 更に、戦争など有事に動員される海兵隊の派遣も決定。次期大統領候補と目される、民主党所属・カリフォルニア州のニューサム知事はトランプ政権の介入に対して「事態を悪化させている」と非難している。 首都ワシントンで14日に行われる軍事パレードに合わせて、各地でさらに広がる見通しの抗議デモ。今後のポイントについて、前嶋教授は次のように述べた。 「内乱法(反乱法)というトランプ政権がまだ発していない法律がある。1800年代の最初の法律だが、これを使うと大統領がさらに強い権限で人々を摘発することができるため、内乱法が適用されるかどうかが大きなポイントになってくるだろう」

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