なぜ騙される?あとを絶たない特殊詐欺への対策を専門家に聞く【高知】

全国的にあとを絶たない特殊詐欺。高知県内ではこの半年間で、すでに被害件数・被害額が去年を上回っています。私たちが被害を未然に防ぐにはどうすればいいのか。心理学の専門家からの意見も交えながら考えます。 実際に起きた特殊詐欺で使用されたビデオ通話の映像の画面に映る男は、大阪地検特捜部の検察官を名乗り身分証を見せてきました。その後も丁寧な言葉遣いや振る舞いに電話を受けた男性は検察官だと信じ込み、お金を騙し取られてしまいました。全国的に被害があとを絶たない特殊詐欺。高知県内はどのような状況なのでしょうか。 ■県警本部生活安全企画課 近藤秀明課長補佐 「わずか半年で約2億5千万という被害が発生していて、非常に由々しき事態だと認識している。特に捜査員などを騙るオレオレ詐欺、こちらの被害が甚大なことになっていて県民の皆さんには注意してもらいたい」 警察によりますと県内で今年に入り、18日までに47件の特殊詐欺の被害が発生。被害総額は2億5000万円以上にのぼります。被害総額は去年1年間の金額をすでに上回るペースです。また今年に入り、特殊詐欺の手口にある特徴が表れていると言います。 ■近藤秀明 課長補佐 「警察官や検察官また、裁判官など捜査機関を名乗るオレオレ詐欺は現在で17件発生していて、被害額も1億5654万円となっている。これは県下の特殊詐欺被害のうち被害金額の62%を捜査機関を騙るオレオレ詐欺が占めている状況」 去年までの5年間、県内の特殊詐欺で最も多かったのは架空料金請求詐欺による被害でしたが、今年に入り警察など捜査機関を騙るオレオレ詐欺が激増。SNSやビデオ通話などを使い、偽物の警察手帳や逮捕状を見せ、お金を騙し取る手法が横行していますが― ■近藤秀明 課長補佐 「100%無い。警察官がSNSやビデオ通話で身分証明書を見せる逮捕状を見せるということは100%無いので、そういった行動を見せられた時はすべて詐欺だと思っていい」 なぜ、特殊詐欺の被害にあう人が後を絶たないのか。南国市出身で犯罪学や心理学に詳しい滋賀大学の島田貴仁教授は県内で被害が増加する背景にライフスタイルの変化があると指摘します。 Q.高知で増えているのはなぜか? ■滋賀大学 島田貴仁教授 「コロナの前はそんなにビデオ通話でしゃべることをしなかったけど、今だったら当たり前にビデオ通話することが日常生活で行われているので、ニセの警察官としゃべって騙されるということが起きてしまう。高知のような、いわゆる地方部でも決して安全ではなくなってきている」 島田教授は、どんな人でも詐欺の被害にあうおそれがあり、その要因として人間が持つ社会的な心理が影響しているといいます。 Q.なぜ騙されてしまうのか? ■島田貴仁教授 「(犯人は)例えば、警察官などの権威がある人を利用するとか、言葉巧みに従属をさせるとか、あとは驚かせるとか焦らせるなどして、冷静な判断ができないようにしていく。(被害者は)詐欺に騙されやすい性格・傾向があるわけではなくて、人間は誰しもこの権威に弱かったり、動転すると判断力を失ってしまうものだし、今回の警察官を騙る詐欺などでは、人間がこの社会生活を送る中で身につけてきたルールに従わないといけないといったような意識を犯人たちは悪用している」 犯人の思惑に乗らないために、どんな状況でも冷静な対処を心がける意識が大事だと強調します。 ■島田貴仁教授 「犯人から言われた事や偽の連絡を鵜吞みにするのではなく、ネットで検索して調べるや警察署に電話してかけなおしで確認することが大事」 島田さんは、「自分は大丈夫」という意識が逆に冷静な判断を鈍らせ、被害につながると警鐘を鳴らします。 ■島田貴仁教授 「ほかの人がたまたま騙されていただけで、自分は安全だということはありえない。根拠のない評価をしてしまう。人間はそういう生き物。ちょっとコストをかけてセキュリティ対策するとか、詐欺の問題に関心を持つことが結果的に人の身を守る。自分を過信しない」 人の心のスキにつけこみ、お金をだましとろうとする犯人たち。被害を未然に防ぐためにも、「自分は騙されるかもしれない」と想定してできる対策を講じていくことが私たちに求められています。 心理的・物理的な対策が求められている特殊詐欺。こうした中、物理的に犯人からの電話を遮断する取り組みが全国でおこなわれています。それが「みんなでとめよう!!国際電話詐欺」通称「みんとめ」です。特殊詐欺のなかでも国際電話を利用した被害が増えていることを受けて始まりました。 高知県内でもこの取り組みは始まっていて、高知市のホームページなどでも紹介されています。国際電話から固定電話にかかってくる電話を防ぐ取り組みは、最寄りの警察署やウェブサイトから申し込みが可能です。また、携帯電話などでもキャリアやアプリによる対策を呼び掛けていて、被害に会わないための行動が今必要とされています。

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