“もう1本”のドリンクと引き換えに命を落とす・・・模倣犯も複数確認された【未解決事件】「パラコート連続毒殺事件」の犯人像を推理する

自動販売機でドリンクを購入した人が、取り出し口にあった“もう1本”のドリンクを飲んで死亡する――そんな現象が連鎖した無差別殺人事件「パラコート連続毒殺事件」は、1985(昭和60)年4月から11月にかけて全国各地で発生した。ドリンクには、いずれも除草剤「パラコート」などの猛毒の農薬が混入されていた。9月20日までの間に、少なくとも5名が命を落としている(ほかに模倣自殺が指摘される事件で1名死亡)。警察が注意を呼びかけ、自販機に警告の貼り紙が掲出されるようになってもなお、100円程度の“もう1本のドリンク”と引き換えに命を落とす人々はあとを絶たなかった。 <前編:【未解決事件】なぜ人々は”放置された”毒入りドリンクを飲んだのか? 「パラコート連続毒殺事件」の真相から続く> ※地名すべて当時 ■東京で発生した模倣犯らしき犯行 一連の事件が同一人物による犯行なのかどうかはわからない。広島、京都、大阪、三重、福井、宮崎、和歌山と、すべて西日本だが、それとて気軽に移動できる距離ではない。また、郊外や小さな市町村であることが多い。犯人は、わざわざコストをかけて、各地を巡り毒入りドリンクを放置したのだろうか? 9月下旬、事件は関東地方にも波及した。 「東京でも毒入り飲料 飲んだ大学生入院」(朝日新聞 1985年9月25日夕刊) 9月25日、東京都世田谷区で、自販機の取り出し口にあったドリンクを飲んだ22歳の男性が体調不良を訴えた。検出されたのはパラコートではなく、それより毒性が弱い石灰硫黄合剤だった。さらに27日には、東京都北区で同様の事件が発生。44歳の女性が放置された石灰硫黄合剤入りドリンクを飲んでいる。どちらの被害者も命はとりとめた。なお、これら2件については、模倣犯による犯行の可能性が疑われた。 そして、10月5日、埼玉県鴻巣市で44歳の男性が、10月15日には奈良県橿原市で69歳の男性が、10月21日に宮城県で55歳の男性が、10月28日には大阪府河内長野市で50歳の男性が、いずれも自販機に放置されていたドリンクを飲んで死亡した。 毒入りドリンクが放置される地域は、埼玉や宮城などへと広がり、もはや全国どこでもリスクがある状況となった。当時、親が小さな子どもに、自販機でドリンクを購入すること自体を禁じたケースもあっただろう。テレビでも盛んに注意が呼びかけられていた。それでも、“もう1本のドリンク”を飲んでしまう事例は続いた。 11月7日、埼玉県浦和市で45歳の男性が死亡。17日には、埼玉県児玉郡で17歳の女子高校生が死亡した。これが初の女性の死亡例である。24日には石川県金沢市で25歳の男性が死亡した。当初は西日本を中心に発生していたが、10月以降、犯人は東日本に軸足を移したようにも見える。ただし、石川県での事件以降も、毒入りドリンクが放置されていた可能性はあるが、同様の手口によって死亡者が出たケースは確認されていない。また、ここでは省略するが、同時期には明らかな模倣犯による事件も複数確認されている。

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