ラグビーコラム 関西大学リーグに起きた春の異変 コロナ禍の有望新人たちの最終学年

【ノーサイドの精神】2016年度から9年間、天理大(6度)と京産大(3度)が秋のリーグ戦の優勝を独占する2強時代の関西大学ラグビー界にこの春、ちょっとした異変があった。 春季トーナメント決勝(6月22日)で立命大が昨季の全国4強で春4連覇を目指した京産大に29-12に競り勝ち、初優勝。2回戦では、昨秋のリーグ戦優勝の天理大が最下位の関大に17-19で敗れる波乱もあった。関大の佐藤貴志監督によると、天理大戦勝利は27年ぶり。立命大にしても昨季は5位で18年度以降6年間、大学選手権出場から遠ざかっている。 と言って、天理大、京産大の実力が落ちているとは思わない。両校が今季初めて激突した練習試合(5月4日、天理大35-28京産大)は春先の試合とは思えない〝バチバチ〟の当たり合いで、今冬の躍進を大いに予感させるものだった。実際、主力を何人か欠いていたとはいえ、この春は天理大は早大に、京産大は明大に勝っている。 つまり立命大や関大が力をつけたということだ。その要因は何か。もちろん日ごろの練習の成果であるのは言うまでもないが、立命大のNO・8島正輝主将(4年)は京産大戦後の会見で、こんなヒントも示してくれた。 「自分たちの代はコロナの世代で、関西に残る選手が多く、立命大にもたまたま良い選手が集まり、1年生のときから『俺らの代は優勝しような』という話をしてきました」 筆者は3年前の22年7月13日の当コラムで、「今年は久しぶりに新人のリクルートで関西が関東に勝った」と喜ぶ関西の大学関係者の声を紹介しながら『有望新人が多数 〝豊作〟の関西大学リーグ、秋が楽しみ』と題する記事を書いた。 この年はコロナ禍の影響もあり、関東の有力大学に進学する傾向があった関西の有望な高校生たちの多くが関西に残った。記事の中では、同年の高校日本代表候補(コロナ禍で海外遠征が中止となったため、代表チームを結成せず、代替企画としてエキシビションマッチを実施。その参加メンバー)の進路が最多の明大の13人に続き、京産大と天理大が8人、さらに同志社大6人、立命大と関学大は5人と、帝京大の4人、早大、東海大などの3人を上回っていた実態に触れている。 そのときの新人というのが、今の4年生たちだ。関大のメンバーにも強豪校出身者がずらりと並ぶ。各チームに分散した有力選手たちが高いモチベーションを持ってチームとともにしっかりと成長を重ねた結果が、この春の〝異変〟なら喜ばしいことだし、冬の関西勢の躍進に期待も膨らむ。

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