安倍晋三元首相銃撃から3年 7月3日公示の参院選で試されるローンオフェンダー対策

来月3日公示の参院選では、令和4年に発生した安倍晋三元首相銃撃事件以降、警察が見直しを進めてきた警護対策とともに、最重要課題と位置付ける「ローンオフェンダー(LO)」対策の効果が試される。未然防止のための情報を全国規模で集約する新たな司令塔機能の設置は、同種事件の発生そのものを許さないという警察当局の〝本気度〟の表れでもある。 ■高まる現場の緊張感 「手荷物検査にご協力をお願いします」。東京都議選の選挙戦最終日を迎えた今月21日。パイプ柵やコーンバーで区画された都内の公園で、制服、私服の多数の警察官が警戒に当たっていた。 石破茂首相が、自民党公認候補の応援演説に駆け付けたこの日。マイクを握った石破氏の背後には、銃弾を防ぐ「防弾ブランケット」が置かれ、直近の高層マンションの外階段では、各階に配置されたSPらが鋭いまなざしを向けていた。 安倍氏銃撃事件を受けて改定された警護要則の施行後、警察庁は今年5月末までに都道府県警が作成した警護計画案約9700件を事前審査し、約74%を修正した。手荷物検査の強化などで今年1~5月、警護現場で危険物を発見したケースは約20件に上る。石破氏も出席した1月の能登半島地震追悼式では、会場近くで5本の刃物を所持していた男を逮捕した。 ■「襲撃」投稿者を特定 警察がこうした現場での対策と両輪で力を入れるのが、LOの前兆情報の収集だ。警察庁は4月、都道府県警の公安担当課に担当班・係を設置。警視庁には同月、全国初のLO専従課が発足した。交流サイト(SNS)上の殺害予告や武器製造に関する投稿を監視するほか、不動産事業者や爆発物原料の販売事業者にも協力を求め、「あらゆる情報をクロスさせ、脅威を浮かび上がらせる」(捜査幹部)態勢を構築しつつある。 好事例も出ている。栃木県警が5月、SNS上で、都内で街頭演説を行う政治家を「襲撃する」などとする書き込みを発見。警察庁との連携でその日のうちに投稿者を特定し、居住地を管轄する大阪府警が接触した。警視庁は演説会場の警備強化などの対策をとった。 同様の事例はほかにもあるといい、警察幹部は「いたずらかもしれないが、過激化したり、感化される人もいるかもしれない。一つ一つ脅威の芽を潰していく」とする。参院選に向けて設置された「警察庁LO脅威情報統合センター」は、こうした対応をさらに迅速化するねらいがある。「テロは起こされた時点で負け。結果を残したい」。参院選を控え、警察幹部はこう意気込んだ。(緒方優子)

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