韓国の尹前大統領を再逮捕、検察当局 特殊公務執行妨害などの疑い

韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領が10日未明、昨年12月の非常戒厳の発令をめぐり、特殊公務執行妨害などの疑いで再び逮捕された。身柄を拘束されるのは、3月の釈放以来4カ月ぶり。 尹前大統領は昨年12月3日に非常戒厳を宣布し、約6時間後に国会の要求に従って解除した。この非常戒厳は韓国で政治的混乱を引き起こした。 野党はこれを「内乱行為」に当たると非難。尹氏の弾劾訴追案が同月14日、国会で可決された。憲法裁判所は4月、尹氏に対する国会の弾劾訴追を裁判官の全員一致で妥当と判断し、尹氏を罷免する決定を言い渡した。尹氏は直ちに失職し、6月3日に大統領選が実施された。 ソウル中央地方裁判所の上級判事は9日、尹氏が証拠を隠滅する恐れがあるとする検察の主張を認め、逮捕状を発行していた。 尹氏は1月、内乱の疑いで拘束令状に基づいて拘束され、内乱罪で起訴された。韓国で現職大統領が起訴されたのは初めてだった。 その約2カ月後の3月8日、尹氏は拘置所から釈放された。ソウルの裁判所が、手続き上の理由などから拘束を取り消した。 韓国の聯合ニュースによると、9日の約7時間にわたる令状審査で、特別検察官は5件の容疑をめぐり逮捕状を発行するよう求めた。 5件には、尹氏が非常戒厳宣布の前に開いた閣議に、一部の閣僚を招集せず、これらの閣僚の権利を侵害した疑いなどが含まれる。 尹氏は9日、弁護士を伴って令状審査に出席し、容疑を否認した。その後、ソウル市内の拘置所に移され、逮捕状をめぐる決定を待つこととなった。 捜査当局は1月、内乱の疑いで尹氏に出されていた拘束令状を執行し、尹氏を初めて拘束した。ソウル中心部の大統領公邸では、大統領警護庁が拘束を阻止しようとバリケードを築いていた。捜査員らはバリケードを突破し、有刺鉄線を切断して尹氏の身柄を押さえた。 約2カ月後、尹氏は釈放された。しかし、尹氏の刑事裁判は続いている。 有罪となれば、尹氏は終身刑または死刑に直面する可能性がある。 報道によると、検察は、尹氏が非常戒厳を正当化する目的で、北朝鮮側に軍用ドローン(無人機)を飛行させるための指示を出していたことを示す証拠を見つけたとされる。 尹政権の複数高官も、非常戒厳をめぐる内乱と職権乱用の容疑で捜査対象となっている。 内乱罪は、大統領の免責特権が及ばない数少ない刑事犯罪の一つ。尹氏はすでに失職しているため、ほかの刑事責任も問われる可能性がある。 尹氏の罷免に伴い、6月に実施された大統領選では、「共に民主党」前代表の李在明(イ・ジェミョン)氏が選出された。 李大統領は、非常戒厳がもたらした危機的状況を受け、民主主義を強化することを公約に掲げた。また、非常戒厳や尹前政権をめぐる犯罪の疑いを捜査する特別検察チームを任命した。 (英語記事 South Korea's ex-president Yoon Suk Yeol rearrested)

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