昨季“逮捕者数最多”のプレミアクラブを英紙が特集 全体件数は減少も一部で深刻化

2024-25シーズン、イングランドおよびウェールズで発生したフットボール関連の逮捕件数は1932件に上った。これは前年度比で11%の減少となり、新型コロナウイルスによる観客規制が解除されて以降、初めての減少である。しかし、全体の件数が下がった一方で、特定クラブに関する数値は依然として深刻だ。『Mirror』が伝えている。 イングランド国内クラブで最も逮捕者が多かったのは、マンチェスター・ユナイテッドで121人。2位はマンチェスター・シティ(94人)、3位はウエストハム(77人)であった。『Home Office』が発表した統計によれば、ユナイテッドの逮捕者のうち49%がホームゲームで発生しており、その中でも暴力や公序良俗違反が34件と最も多かった。 最も多かった逮捕理由は「公的秩序の乱れ」で全体の32%。また、2022年11月以降でAクラス薬物の所持での逮捕は、2022-23シーズンの9%から19%へと大幅に増加している。 一方で、1583試合で少なくとも1件のインシデントが報告されており、前年度(1341試合)から18%の増加。これは、試合数こそ変わらないものの、事件の発生頻度が高まっていることを示している。 バンニングオーダー(観戦禁止命令)も過去最多となる2439件が2025年6月1日時点で発効中で、これは2012-13シーズン以降で最多。この措置は、対象者に英国国内の試合観戦を禁じると同時に、海外遠征時にはパスポートの提出義務を科すことも可能とする強制力の高い処分である。 最多のバンニングオーダーが発効されたのはウエストハムで112人(前年度93人)。次いでマンチェスター・ユナイテッド(108人)、チェルシー(80人)が続く。チェルシーは前年の54人から大幅増となり、順位を8位から3位に押し上げた。 さらに、1583試合中420試合でヘイトクライムが報告されており、その内容は人種(287件)、性的指向(140件)、宗教(20件)、障がい(19件)、ジェンダーアイデンティティ(3件)と多岐にわたる。これらは『Home Office』が2017-18シーズン以降記録してきた中で最多件数となっている。 一方で、SNSなどを通じたオンライン上のヘイトクライムは、前年の322件から212件に減少している。 試合観戦を通じた感情の爆発が社会的暴力に転じる現状は、もはや一部の“熱狂”では済まされない深刻な社会問題である。スタジアムの安全確保と観戦文化の健全化が、今まさに問われている。

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