マッチングアプリを悪用したぼったくり事件で、警視庁が摘発を進めるグループは、障害者もターゲットにしていた。 生まれつき弱視の20代男性も被害に遭った1人だった。 男性は2月ごろ、障害者や障害に理解のある人向けのマッチングアプリをダウンロード。「障害があるため出会いが少ない。いい人がいれば」との思いだった。 すぐにアパレル店員の「りさ」と名乗る女性とやりとりをするようになった。JR渋谷駅前で待ち合わせ、「行きたいバーがある」と言われるがままに2人で向かった。 薄暗いバーで、店員から「飲み放題は1人5000円」と説明された。りさから「負けたら罰ゲームね」とトランプゲームの勝敗で酒を飲むことを勧められ、大量に注文された。普段自身は酒を飲まないが、楽しい時間だった。 会話は弾み、視覚障害について「私は気にしない」とりさは話した。男性は「理解のある優しい人だと思っていた」と振り返った。 入店して2時間近くたったころ、店員から「お会計が40万円ほどになっています」と告げられた。注文した酒は飲み放題に含まれていないと説明され、店員同伴でコンビニのATMに向かった。料金が誤っていたなどと理由を付けられ、計約68万円を支払った。 店員は客のふりをするりさにも代金を請求したが、「午後9時を過ぎたらお金を下ろせない」などと話したため、男性が立て替えた。「お酒を飲んで冷静じゃなかった。『払わないといけない』とあきらめてしまった」 その後、りさと連絡が取れなくなった。警視庁に相談し、だまされたことに気付いた。 出会いを求めるという純粋な気持ちを踏みにじられたことに怒りや落胆を覚えた。障害があることで狙われたとの思いもあり、「悪質だ」と憤る。 りさと名乗った女が逮捕されるなど、ぼったくりグループの摘発は進んでいる。男性は「一安心」としつつ、「全員が捕まってほしい」と捜査の推移を見守っている。