【独自】「うるさいからアスペルガーやろ」日大 ボート部の監督に浮上した「暴言、恫喝」疑惑

日本大学に新たな問題が起きた。 日大といえば、6月10日に日大重量挙げ部の元監督が、特待生の保護者から、本来であれば免除されるはずの授業料を受け取ったとして逮捕されている。そんな中、別のスポーツ部でも監督の問題が発覚したのだ。 「日大ボート部の監督による、生徒に対する差別的発言や暴言、恫喝が日常的に行われていたのです。現在、日大の事務局で調査が行われています」 そう語るのは、現役ボート部の生徒から相談を受け、被害にあった生徒たちの聞き取りを行ったという保護者だ。 ボート部監督とは、どういった人物なのか。 「日大ボート部のOBで、卒業後は地元、兵庫県神戸市で、競技指導や普及活動を行っています。’12年からは、中学生を対象としたボートクラブの監督を務め、全国レベルの選手を次々と輩出しています。’13年にはNPO法人を設立し、ボート競技をメインに地域へのスポーツ普及を目的とした活動にも従事していました。日大ボート部の監督に就任したのは’23年で、今年で3年目になります。かなりスパルタ指導で知られた人物です」(保護者) 日大では日常的に暴言、恫喝、そして、脅迫に近い発言まで行っていたという。 「監督からの日常的な暴言に精神的に耐えられない。明らかなパワハラと感じる言動もあり、監督を解任してほしい」 と告発したのは、’24年4月に大学に入学し、同月にボート部に入部、入寮した生徒である。彼らへの聞き取りによると、入寮直後から監督からの暴言、恫喝が始まり、それは今年の6月まで日常的に行われていたという。 人格を否定する発言や差別的発言は日常的に繰り返されたため、場所、日時が特定できた内容だけをここに列挙する。 【ケース1】 ’23年12月、タイで開催された「U19アジアローイングジュニア選手権大会」で、1人の生徒(当時高校生)が他高校の選手からプライバシーを侵害されるトラブルに巻き込まれた。この問題は、1年以上にわたって解決せず日大入学後も続いていた。精神的に追い詰められた生徒は、同じ大学のボート部の仲間に相談。2人は、部内で監督の暴言が常態化している実情から「訴えても揉み消される」と判断。そこで’25年4月21日、スポーツ庁へ公益通報(プライイバシーを侵害し続ける相手に適正な措置を取ってもらうため)を行った上で、5月2日に、同様の書面を大学の監督とコーチ陣にも提出した。 しかし、その夜、トラブルに巻き込まれた生徒は監督と、コーチの一人に呼ばれ、監督から、 「こんなこと(公益通報)をしていると、学費免除がなくなるぞ」 「補助金がなくなるぞ」 「除籍もあり得る」 などと叱責される。さらにその翌日、一緒に報告した生徒を呼び出し、監督は、 「お前の学費免除もなくなるぞ」「首を突っ込むと、自分が損をするぞ」 などと、叱責している。つまり、トラブルを隠蔽したままにしろと圧力をかけてきた可能性がある。 ◆「俺にチクってくれる奴がいる」 【ケース2】 ’24年4月入寮の生徒(現在大学2年生)は、監督からコックス(漕ぎ手は後ろ向きに座るのに対し、コックスはボートの最後部に座り、前方を向いて漕ぎ手に指示を出す舵取りの役目)に指名される。そのため、監督の近くで指示を受ける機会が多く、暴言のターゲットにされた。 監督は、神戸市に生活の拠点を置いているため、生徒を直接指導するのは、毎週金曜日から日曜日の3日間と決まっていた。そのため、監督が金曜日に上京すると、生徒をすぐに監督室に呼び出し、「クソ野郎」「アホ」「ポンコツ」などの暴言を浴びせていた。さらに、 「お前のことずっと見てるからな、俺にチクってくれる奴がいるんだよ」 などと発言している。また、生徒が’24年夏に開催された「佐賀国体」に出身地の代表として出場が決まった際には、 「なんで国体に出るんだ?」「日大の仕事をしろアホ」 などと発言。 ’25年1月以降はLINEなどでの暴言も増え始めた。毎週金曜日の呼び出しは継続され、’25年2月下旬、次のような出来事が起きた。部員の1名がノロウイルスに感染し、動けなくなるほどになってしまった。しかし、救急車が高額の実費であったため、手配を断念。部則違反であったが、緊急を要したため同生徒は自ら車を運転して部員を病院へ連れていった。それに対し、監督は同生徒を責める暴言を吐いた。その直後、監督に呼ばれ、 「次、何かあったら〇〇(同生徒の母親の下の名前を呼び捨て)に電話するぞ」 と、脅されたという。’25年4月25日にもLINEで、 「何かあったらすぐに母親に電話するぞ」 とのメッセージとともに、電話番号のメモ書きを写した画像を同選手に送信している。 【ケース3】 ’24年10月18日から行われた「第65回全日本新人ローイング選手権大会」で、好成績を残せなかった選手に対して次のような罵倒を繰り返している。 1、2年生の選手に対して「お前は障がいじゃないのか」と発言。同選手に対しては、普段から自転車を漕いでいる姿を見ては「頭を振りながら漕いどるからおかしいんや」と発言していた。これだけではなく精神的に追い詰めるような威圧的・脅迫的な発言を繰り返す。 2、3年生の選手の声の大きさを指摘し、「うるさいからアスペルガーやろ」と発言。 3、同大会での成績不振を理由に、出場選手たちに、「お前らの汗が汚い」「ゴミ」「雑魚」「気持ち悪い」などの発言を繰り返す。 ◆「反論すれば自分が潰される」 監督によるこれらの暴言を受けた【ケース1】の生徒は、保護者に、 「監督に学費免除の権限はないことは明らかです。でも、学生はその“言葉”に逆らえない。支配の道具として“制度”をちらつかせることで、通報を潰そうとしていたのだと思います」 と話し、【ケース2】の生徒は、 「部活に対してのモチベーションがなくなってしまって、監督が来る金曜日は部屋から出たくなくなったり、寮にいること自体憂鬱になりました。そのときは、周りの人もみんな監督にチクってるのかなとか疑心暗鬼になっていた部分もあって、相談する人がいなかった。寮の居心地が悪く精神的にきつかった。誰も信じられないという感情になり、仲間が大事な部ではありますが、冬まで心を閉ざしていました。 一人になったときは、泣いたこともあります。僕が入寮した日から現在に至るまでの約1年半、監督からの暴言は当たり前のように繰り返されました。怒鳴り声と罵声が部内に染みつき、生徒、誰もが『反論すれば自分が潰される』という空気の中で沈黙を強いられていました」 などと話している。 『FRIDAY』は大学の見解を聞くべく、日本大学競技スポーツセンターに電話で上記の内容を伝え、日本大学広報部宛にメールで質問内容を送付。メールで次のような回答を得た。 〈ご指摘のような事実についての情報提供はありましたので、事実関係の把握に努めているところです。関係者が多数のため、慎重な調査を重ねている最中です。十分ではない調査に基づく報道により、真相解明を遠ざけることにならないか危惧しております。くれぐれもご配慮いただけますと幸いです〉 この回答に対し、保護者は、次のように話した。 「我々の調査の中で明らかになったのは、監督による恫喝・罵倒・差別的発言が、日常的に部員全体へ向けて繰り返されていた実態です。もはやそれは“指導”ではなく、精神的暴力による支配構造だったと思います。日大は、’18年5月に行われた試合で、監督、コーチによる『危険タックル』が指示され、大きな社会問題となりました。その後、監督、コーチは処分を受けました。今回の件でも、大学は真摯に調査を行っていると感じています。 あくまで監督以下一部指導陣の問題と考え、監督が現状、ボート部に関わらないようにしてくれています。しかし、一番生徒が恐れているのは、監督からの報復です。日大には過去にもそのような事態があったと聞きます。そうならないためにも、世間に現状を知ってもらうことは非常に大切だと考えています」 被害を受けている生徒のためにも、日大の早急な対応が求められる。

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