神戸市中央区のマンションで住人の会社員片山恵さん（24）が刺殺された事件で、殺人容疑で逮捕された谷本将志容疑者（35）が3年前に有罪判決を受けていたことが25日、分かった。 容疑者は2022年5月、神戸市内のマンションに侵入し、女性の首を絞めて軽傷を負わせた。翌日にも被害女性が住むマンション付近を歩き回っていたため、警察に殺人未遂の疑いで緊急逮捕。同年9月に傷害罪やストーカー規制法違反などの罪に問われ、神戸地裁は執行猶予付きの有罪判決を言い渡した。 判決文によると、路上で見かけて一方的に好意を抱いた女性に対し約5カ月ストーカー行為を継続。オートロック玄関から女性の後に続きマンションに侵入、帰宅する女性がドアを開けた際に室内に押し入っていた。 被害者の自宅マンションに入った手口は今回の刺殺事件と酷似しており、SNS上では「法的に対策できなかったのか？」という意見が噴出。しかし、元検事でもある亀井正貴弁護士は「殺人未遂で逮捕されても、軽い傷害やストーカー規制法違反の罪名で確定すれば、初犯なら実刑は難しい」と、現行の量刑を解説した。また、容疑者の量刑は懲役2年6月、執行猶予5年だったとも報道されているが、亀井弁護士は「その量刑とすれば検察はかなり踏み込んで、次は実刑になるぞ、と容疑者にメッセージを送ったことになる」とも語った。 容疑者が勤務する東京都新宿区の会社代表は本紙取材に「執行猶予についてはもちろん知らなかった」と話した。来年12月には、学校や保育所などで子供と接する仕事に就く人の性犯罪歴を確認する制度「日本版DBS」が運用開始となるが、今回の事件を機に確認対象についての議論が過熱しそうだ。 【防犯の専門家に聞く】 事件が起きた神戸市中央区のマンションは、1階入り口にオートロックのドアが設置されていた。容疑者とみられる男は、被害者の女性が解錠した後、ドアが閉まる前にすり抜けて入ったとみられる。防犯の専門家は「オートロックだからと安心してはいけない」と話している。 兵庫県防犯設備協会の島田清専務理事によると、後から付いてきた人がオートロックのドアに入れないよう、設備で対策するのには限界があるという。「後ろの人に気付いたら、その人にオートロックを解錠させて自分は後から入るように」と助言する。 電話が急にかかってきたふりをして、その場をやり過ごすのも手だ。