神戸市中央区のマンションで20日夜、住人の会社員片山恵さん(24)が刺されて死亡した事件で、殺人容疑で逮捕された会社員谷本将志容疑者(35)とみられる男が、事件前日に片山さんの勤務先付近の防犯カメラに写っていたことが26日、捜査関係者への取材で分かった。事件は27日で発生から1週間。兵庫県警葺合署捜査本部は容疑者の前日までの足取りを含め、全容解明に向けた捜査を本格化させる。 県警は、20日午後6時半ごろに片山さんが同市中央区の勤務先を退勤した直後から、帰宅するまでの約50分間にわたり、容疑者が後をつけたとみている。 捜査関係者によると、勤務先のビル付近に設置された防犯カメラには、事件前日に谷本容疑者とみられる男が、ビルの前をうろついたり、座り込んだりする様子が記録されていた。 また、事件当日の映像には、片山さんの退社前から、容疑者と似た男が周辺をうろつき、勤務先ビルを出てきた片山さんの尾行を開始した場面とみられる状況が写っていた。 映像によると、黒い半袖と黒い長ズボン姿でリュックサックを背負った男が、道路を横断してビルに近づき、入り口をのぞくような動きをした後、約50メートル西の交差点へ歩いて移動。直後にビルから3人連れで出てきた片山さんが、この交差点で他の2人と別れて1人になると、男が後を追い始めていた。 谷本容疑者は東京・新宿の運送会社に勤務し、17~21日は休暇を取っていた。捜査関係者によると、片山さんの勤務先から徒歩5分ほどのホテルに17日から宿泊。事件当日も宿泊予約を取っていたが、実際には事件発生から1時間以内に新神戸駅で東京方面行きの新幹線に乗っていた。 これまでの捜査で2人の接点は見つかっておらず、捜査本部は、容疑者が面識のない片山さんを執拗に追い、一方的に襲った可能性が高いとみている。 谷本容疑者は、逮捕後の調べに「殺意があったか分からないが、ナイフで腹の辺りを1回か2回くらい刺したのに間違いない」と話し、片山さんについては「全く知らない人」と供述している。