ベンチの財布持ち去った男追いかけ、車内から引きずり出し…高校3年生「絶対に逃さない」

駅構内のベンチに置いてあった財布を盗んだ男の逮捕に協力したとして、滋賀県立甲西高校3年、田中奈生史(なおふみ)さん(18)=同県栗東市=が草津署から感謝状を贈られた。「怖さもあったが、無意識に体が動いた」。特別な正義感は持っていないと淡々と取材にこたえた。ただ、感謝状を手渡した同署の羽田賢一署長は「力強く、心温まる正義感」と顔をほころばせてたたえた。 6月24日午後6時20分ごろ、JR草津駅(同県草津市)構内のベンチに置いてあった現金1600円、カードなどが入った財布を、60代の男が持って行きトイレに入るのを目撃した。学校帰りで、塾へ行く途中だった。トイレから出てきた男は財布を手に持っていなかったため、声をかけた。 「さっきの財布はどうされました」 男は声を震わせるなど動揺しながらも、「知らん、知らん」「トイレに置いてきた」「駅員に渡した」などと言い逃れようとした。 田中さんはここで男の盗みを確信。ホームに降りて電車内に逃げる男を、追いかけて腕をつかんで車内から引きずり出した。騒ぎに気付いた駅員が110番し、駆け付けた同署員が窃盗容疑で男を逮捕した。 男の腕をつかみ、車内から引きずり出すときは「恥ずかしかったが、『絶対に逃がさない』と必死だった」という。 感謝状の贈呈式に同席していた母親の玲奈さん(50)はこれを聞いて「一番に思ったのは(逆襲されるなど)危ないことではないのかと。無理をしないでほしいし、無事でホッとした」といい、子を思う親心をあらわにしていた。 田中さんの将来の夢は「牛を育てたい」。酪農関係の大学を目指しているという。最後に「犯人逮捕に協力して、感謝状を受け取ったことは大学受験に弾みがつくのでは」と問うた。 「いいことしたんやな。弾みがつくかな…そんなことないか」。さわやかに笑い飛ばしていた。(野瀬吉信)

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