韓国政府は米国移民当局に拘禁されている300人あまりの韓国人の釈放と帰国のために交渉を続けているが、早期帰国が実現したとしても、容易ではない課題が残る。政府は、自ら帰国すれば米国に再入国する際に不利益を被る可能性があるため、ハイレベルの外交チャンネルを通じて「不利益を与えない」という約束を取り付ける計画だ。また、韓国企業が投資している米国内の建設現場で同様の状況が再発しないよう、ビザのクォーターの確保などを進めている。 チョ・ヒョン外交部長官は8日、国会で開かれた外交統一委員会の緊急懸案質疑で「逮捕された労働者が今後米国に出入りするにあたってさらなる不利益を被らないよう合意したか」というイ・ヨンソン議員(共に民主党)の質疑に、「(米国側と)大枠で合意したが、最終確認手続きを控えている」と答えた。 チョ長官は同日夕方、米国に向けて出国し、9日にルビオ国務長官に会い、この問題を最終調整する計画だ。政府高官は同日、ハンギョレに「チョ長官が不利益をなくすために訪米する。短期商用ビザ(B1)、ビザなし電子旅行許可(ESTA)であれ、再入国時に問題がないということを確認するためのもの」だと述べた。大枠で合意しただけに、ルビオ長官などとの面談を通じて確実な答えを引き出す計画だ。 外交部はこれまで、ビザの種類によって不利益を被る恐れがあるとして、慎重な立場を示してきた。外交部当局者は同日、記者団に対し、「個人が所持するビザ、在留資格によって(不利益の有無に)差があり得る」とし、「できるだけ不利益のない形で推進しようとしているが、(米国内の)法的手続きを尊重しなければならないため、個々人の(滞在)資格によっては変更が容易ではない」と述べた。特に、今回拘禁された人々をすべて「不法滞在」と断定することはできず、不法滞在を認めて自ら帰国することに対する懸念が高まっていた。B-1ビザやESTAといっても、ビジネス活動が完全に禁止されているわけではないからだ。B-1ビザやESTAだとしても「ビザ免除で入国するビジネス訪問」(waiver business)の場合、ビジネス会議、契約交渉、外国雇用主所属で短期トレーニング参加、米国内の会社の点検および工場視察などが可能だ。米国で金を稼ぐのでない限りは、短期出張は可能だということだ。 チョ長官は今回の訪米を通じて、対米投資の過程で韓国人の安定的なビザ確保案も集中的に提起するものとみられる。政府は2012年から韓国人専門職労働者を対象に別途のビザクォーター(E-4)を新設する「韓国パートナー法(Partner with Korea Act)」の立法を推進してきたが、米国人の雇用が侵食されるのを懸念した米議会と労働界の反対で可決されなかった。 一方、オーストラリアは年間1万500人、シンガポールは5400人、チリは1400人のクォーターを確保している。また、専門職就業ビザ(H-1B)の韓国人割り当ても推進する計画だ。 専門職就業ビザのクォーターは毎年8万5千件ほどに制限され、競争率が高い。今期の会計年度では約47万人が申請しており、抽選で決まる形だ。チョ長官はこの日、外統委で「良い方向に向けて、E-4ビザやクォーター、またはこの二つを合わせてできるすべてのことを交渉してみる」とし、「対米投資が大幅に拡大してきているため可能性が高い状況だと判断している」と述べた。 ソ・ヨンジ、コ・ギョンジュ記者 (お問い合わせ [email protected] )