カンボジア北西部・ポイペトの拠点で特殊詐欺の「かけ子」をしたとして、日本人の男女29人が詐欺未遂容疑で逮捕された事件で、愛知県警は10日、29人が別の特殊詐欺事件にも関与していたとして、全員を詐欺未遂容疑で再逮捕し、発表した。かけ子の日本人らは、詐欺の実績が悪かったり「帰りたい」などと言ったりすると、拠点の管理者側から暴行を受けることもあったという。県警は29人の認否を明らかにしていない。 県警によると、29人は19~52歳の男28人と50歳の女1人。再逮捕容疑は5月、警察官などをかたってポイペトの拠点から京都府の団体職員の男性(63)にうその電話をかけ、現金をだまし取ろうとしたというもの。 5月に現地当局が29人を拘束。8月にプノンペンから日本に移送され、移送中のチャーター機内で詐欺未遂容疑で逮捕された。 県警の調べでは、29人は塀に囲まれ、武装した警備員がいる拠点で生活。拠点を管理していたのは中国人とみられる。29人は数人ごとのチームに分かれ、朝から晩まで詐欺電話をかけていた。「新人」のかけ子は詐欺のセリフをまとめたマニュアルを暗記させられ、「先輩」が電話する様子を見てだましの技術を学んでいた。 詐欺電話の通話内容は録音し、一日の終わりには課題を洗い出す「反省会」を開いて、翌日以降の詐欺の成功率を上げる工夫もしていたという。拠点からは、警察官の偽物の制服や、警察本部の名称が書かれた看板、偽物の逮捕状などが押収された。ビデオ通話で見せて相手をだます道具として使っていたとみられる。 摘発の端緒は、1月に現地から帰国した愛知県内の男性の情報提供だった。男性は「自分は求人サイトで応募した」などと説明していたという。(高橋俊成)