20代の韓国の大学生がカンボジアで国際犯罪組織から拷問を受けて死亡した事件以降伝えられている情報は衝撃的だ。しかしカンボジアのボイスフィッシングなど国際犯罪組織に韓国人がどれほどいるかは実態も正確に把握されていない。外交部はカンボジア政府の資料に基づき、韓国人加担人員を約2000人と推算し、大統領室に報告した。国家情報院は1000人をやや超えると見ている。2022年7月に発足したボイスフィッシング合同捜査団が3年間で829人を立件し、345人を拘束したのを勘案すると、決して小さな規模ではない。 一部は拉致されたとみられる。全国の警察署でカンボジアに家族や知人が監禁されているという届け出が続いている。現在80人余りの安全が確認されていないという。拉致されていなくても相当数は自由が制限された状態で犯罪に加担したり暴力に露出したりしていると推定される。今年1-8月にカンボジアで韓国人拉致事件が330件にのぼったが、その間政府は何をしていたのか。政府の消極的な対応が事態を深刻化させた側面が大きい。今からでも警戒心を持って積極的に対応しなければいけない。今は与野党が尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の問題か、李在明(イ・ジェミョン)政権の責任かをめぐり争う時ではない。 李在明大統領は昨日(14日)の国務会議で「可用な資源を総動員して確実にこの問題に対応するべき」と指示した。韓国がカンボジアに提供する政府開発援助(ODA)は今年だけで4300億ウォン(約450億円)を超えるが、ボイスフィッシング犯罪対処に関しては十分な協力を得られていない。今こそ外交力を総動員しなければいけない時だ。カンボジア警察との協調を強化して現地に韓国人対象犯罪を担当する「コリアンデスク」を設置し、韓国の警察を派遣する案も積極的に推進する必要がある。現在カンボジアでは犯罪に加担して現地で逮捕され、拘禁されている韓国人もいる。犯罪の容疑があるとしても劣悪な拘禁施設に放置することはできない。国内に送還して捜査と裁判をする案を模索しなければいけない。 また、人を誘引してカンボジアに送る国内の募集役とブローカーに対する徹底的な捜査も必要だ。今でもSNSなどには高収益をうたって東南アジア行きを誘引する掲示物が多い。ここにだまされてしまえば十中八九はボイスフィッシングのような犯罪にかかわり国内被害者も増える。長期的に国際協調を拡大し、こうした犯罪団体を根絶する対策が求められる。 今回の事態が解決されるまではカンボジアに対する旅行制限措置も強化する必要がある。一般国民も海外で自身の安全を自ら守ろうとする認識を持ち、政府の勧告と指示を徹底的に従うのが望ましい。個人の安全は自身がまず守らなければいけない。