《ボリビア》大統領選で右派当選=20年続くモラレス時代に幕

ボリビアで19日、大統領選の決選投票が行われ、中道右派候補のロドリゴ・パス上議が54・5%の票を獲得、20年ぶりに右派政権になった。パス氏は11月8日に就任予定。議会の過半数を掌握しているが、政権安定のためには左派との合意形成が必要とされる。経済危機や燃料不足が続く中、同氏は国内の分断緩和やブラジルとの関係強化を目指す方針を示していると20日付CBNなどが報じた。 経済学者で58歳のパス氏は、ハイメ・パス・サモラ元大統領の息子であり、キリスト教民主党に所属。決選投票では、伝統的な右派政治家で、事前調査でも有利だった自由連合候補のホルヘ・キロガ・ラミレス元大統領が44・5%に終わり、パス氏が当選した。 投票率は高く、有効投票は全投票数の約94・6%を占め、白票は0・8%、無効票は4・6%だった。パス氏は全国9県のうち6県で勝利したが、対抗馬のキロガ氏の基盤であるタリハ県では及ばなかった。 今回の選挙は、20年間にわたる左派の社会主義運動党(MAS)政権の終焉と、それを率いてきたエボ・モラレス時代の終わりを象徴するものとなった。8月の第1回投票では左派が分裂して決選投票に進めず、選挙前の世論調査を覆す結果となった。 今回の結果を受け、MASは指導部の刷新や路線見直しを迫られている。モラレス元大統領とルイス・アルセ現大統領の対立が背景にあり、内部分裂の可能性も指摘される。ボリビアは先住民族系住民が過半を占める多民族国家であり、今後の政党再編や政策形成においても、地域や民族的アイデンティティの影響は引き続き重要な要素となる。 モラレス氏はボリビア初の先住民族出身大統領として、06〜19年まで3期にわたり政権を担った。4期目の当選が宣言されたものの、最高裁はこれを違憲と判断し、就任を阻止。司法当局から追及を受けているにもかかわらず、モラレス氏は10月19日、コチャバンバの村落で投票を行った。 選挙期間中、パス氏は逮捕状が出ているモラレス氏への直接的な批判は控え、左派に失望した有権者の支持を取り込み、国の深刻な分断を和らげるための穏健政策を掲げた。 パス氏は勝利演説で国民の選択を尊重し、憎しみを政治の指針にしないよう呼びかけた。議会の過半数を握るものの、20年続いた左派政権後の政治運営には野党を含む合意形成が不可欠だと強調し、協力して国を再建する姿勢を示した。 副大統領候補にはエドマン・ララ氏を起用した。同氏は元警察官で、警察内の腐敗を告発し、TikTokなどのSNSで人気を博している若手の政治家だ。腐敗撲滅を訴える姿勢が支持を集め、パス氏の票固めに大きく寄与したとみられている。 現在、ボリビアは年間約25%の高インフレに加え、燃料不足やドルの枯渇といった深刻な経済危機に直面している。世界銀行は景気後退が27年まで続くと予測しており、燃料補給のための長い行列が国民の日常風景の一部となっている。 経済政策について、パス氏は無駄な公務員支出の削減を通じて財政の健全化を図る一方、外国からの投資誘致に注力し、特に天然資源開発やインフラ整備分野での外資導入を促進する計画だ。これにより、経済成長の持続を目指し、貧困層を含む国民全体に利益が行き渡る「包括的な資本主義」実現を目指す。天然資源の開発に関しては、民間の関与を柔軟にし、連邦予算における県の取り分を50%まで引き上げる方針も示している。司法制度改革や米国との関係再構築も進める意向だ。 パス氏の当選にはペルー、パナマ、エクアドル、ウルグアイの大統領らが早速祝意を表明。アルゼンチンやチリの大統領も新政権との協力を約束している。 ブラジルのルーラ大統領も20日、選挙が平穏かつ民主的に実施されたことを称賛する書簡を送り、両国の関係強化に意欲を示した。(3)「新大統領は地域統合と相互協力の重要なパートナーだ」と強調した。パス氏も、ルーラ政権とは立場を異にするものの、両国の経済・政治関係を強化し、ボリビアのメルコスルやBRICS加盟の継続を支持する姿勢も明らかにしている。

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