「単に避妊せず性交したかっただけ」女子高生を連れ回した40歳の男を一刀両断した検察官の「指摘」

「被告人は私より年上です。家族もいる40歳を超えた男性が、SNSで知り合った15歳の子どもに欲情することについて、私はまったく理解できません。子どもを性的対象として見ることは異常であり、心の底から気持ち悪いです。未熟で正しい判断ができない子どもに、性行為に及ぶ被告人を軽蔑します」 自殺願望があった女子高生Aさんを、「いっしょに死のう」と誘い出し、4日間にわたって連れ回した住中隼(すみなか・じゅん)被告(41)。未成年者誘拐と不同意性交等の罪に問われた裁判の判決が10月27日に言い渡される予定だ。 冒頭の言葉は、9月25日に千葉地裁で開かれた第3回公判で、Aさんの親族が読み上げた母親の意見陳述書の一部だ。その内容は、住中被告に対する嫌悪感と強い怒りを感じさせるものだった──。 事件が起きたのは’25年4月上旬ごろに住中被告とAさんがチャットアプリで知り合ったことがきっかけだった。2人はSNSでのやり取りを通じて親密になり、会話の中で「死にたい」と漏らすAさんに対して、住中被告は「いっしょに死のう」と話していたという。「Aさんとは恋愛関係にありました」と住中被告は公判で主張していた。 そして5月13日早朝、つないだままにしていたLINE電話でAさんが「もう嫌だ、死にたい」などと訴えると、住中被告は「もう待てない。すべてを捨てて会いに行くよ」などと答え、会社に休むと電話を入れると、すぐさま新幹線で待ち合わせ場所の秋葉原駅に向かった。 そして仙台、青森と連れ回し、15日に城ヶ倉大橋(青森県青森市)で自殺を試みようとするも、Aさんが「怖い」と怯えたため、自殺を諦めてホテルに宿泊。翌16日に青森市内でAさんといっしょにいるところを警察に逮捕されたのだった。その間、Aさんと性行為に及んだとして、未成年者誘拐と不同意性交等の罪に問われている。 Aさんは警察の取り調べのなかで、「学校のレポートが多くてつらい気持ちになるのに、親から家にいても暇そうだからバイトでもしたら」と注意されたことが、家出の理由だと話したという。 ◆娘を案じていた母親の心境 意見陳述書では、娘のことを心配する母親の気持ちが次のように述べられていた。 「新しい環境で、友達がなかなかできないなど、親として娘が問題を抱えていたことはわかっていました。一日中スマホをいじるようになり、私たち夫婦は何かおかしいと感じていました。レポートをやるといいながら、誰かと通話していたため、娘に注意したこともあります。他のことに目を向けさせたほうがいいかもしれないと考えていた矢先に、今回の事件が発生したのです」 Aさんの親族は、時折嗚咽しながら、意見陳述書を読み上げると、こう続けた。 「娘の行方がわからない間、娘は生きているか、ちゃんと食べられているか、寝られているか、つらい思いをしてないかなど、私は心配で仕方なく、毎日泣いていました。我が子が急にいなくなることが親にとって、どれほど心配でつらいことか。同じく親である被告人にはわからないのでしょうか」 そして、意見陳述書の最後にはこのようにつづられていたのだった。 「9月に入って、初めて弁護人を通じて被害弁償の申し出を受けましたが、現時点ではとうてい受け入れられません。必ず、実刑にしてもらいたいです」 続けて行われた論告弁論で、検察官は「被害者の精神状態が不安定なことにつけ込んだ卑劣な犯行」とし、「性交渉を持った理由として、被害者と恋愛関係にあったなどと述べていますが、中年男性と30歳近く年下の10代半ばの女性が恋愛関係になること自体、にわかに信用し難い」と指摘。さらに住中被告がいっさい避妊をしなかったことについて、こう断じた。 ◆事件で傷ついたのは被害者側だけではない 「被告人は、被害者と性交した際に避妊を求められましたが、自殺することを口実に、これに応じませんでした。被害者が自殺を思いとどまった後も避妊せずに性交していたことから、単に避妊せずに性交することを欲していたことは明らかであります」 そして、「贖罪させるとともに再犯を防止するため」として「懲役6年」を求刑したのだ。 一方、弁護人は「被告人は家庭も仕事も捨てるほどの真摯な恋愛感情から本件に及んでおり、単に自己の性欲を満足させるためだけに本件に至ったのではありません」「妻と離婚することは確実ですが、今後は親族とともに生活し、仕事も親族が紹介する」などとして、「寛大な刑を言い渡すことが妥当」と述べた。 最終陳述では、「今回、私の無責任で身勝手な行動でたくさんの人を傷つけ、たくさんご迷惑をおかけしました。本当に申し訳ございませんでした」と謝罪の言葉を述べた住中被告。 逮捕直後は「Aさんとの4日間を否定したくない、後悔はしていない」と供述したが、独房で自分と向き合った結果、「『いっしょに死ぬよ』と口にしたことが、Aさんの自殺願望を強めた可能性もある」との考えに至ったという。 一方、住中被告が独房で1人内省を深めていた間に、被害者への弁償など、事件の後始末に動いたのは妻であり、住中被告の親族だった。自身の身勝手な行為で被害者や被害者の親族はもちろん、自身の家族や親族まで傷つけた住中被告に、司法はどのような判決を下すのだろうか。 ※「FRIDAYデジタル」では、皆様からの情報提供・タレコミをお待ちしています。下記の情報提供フォームまたは公式Xまで情報をお寄せ下さい。 情報提供フォーム:https://friday.kodansha.co.jp/tips 公式X:https://x.com/FRIDAY_twit 取材・文・写真:中平良

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