監督した映画「Black Box Diaries」で第97回アカデミー賞の長編ドキュメンタリー部門にノミネートされていたジャーナリスト・伊藤詩織さんが26日までに自身のHPで謝罪コメントを発表した。元代理人弁護士らが同作について、防犯カメラ映像の目的外使用など、許諾のない映像や音声が使われていると問題視していた。 「当事者の方々との話し合いや、新バージョンの制作、関係者との調整を重ねる中で、多くの時間を要してしまいました。その間、ご心配をおかけした皆さまに心からお詫(わ)び申し上げます」と謝罪した。 本作は自身が被害にあった性的暴行への調査に乗り出していく姿を記録したドキュメンタリー映画。「事件の経緯を自らの手で記録し続けてきました」とし、加害者に損害賠償を求める訴訟では勝利したが、刑事手続きでは嫌疑不十分で不起訴となったことで「警察の証拠が手元に残らず、自分で事実を残すことが必要でした」と説明。「私はこの作品の監督であり、同時に性暴力の被害を受けた当事者でもあります。取材や制作にご協力くださった方々は、真実に光を当てるために欠かせない存在でした」と続けた。 周囲の協力にも感謝し「この経験が、取材や制作の中で出会う声に向き合う姿勢をもう一度見つめ直すきっかけとなりました。今後も、一つ一つの出会いを大切にしながら、対話と表現を続けていきたいと思います」と結んだ。 「Black Box Diaries」は、これまで50以上の映画祭で上映し、ドキュメンタリー部門のアカデミー賞ともいわれる「IDAドキュメンタリー賞」で新人監督賞などを受賞。アカデミー賞授賞式時点で世界30以上の国と地域での配給も決定しているが、日本での公開は決まっていない。 【コメント全文】 映画『Black Box Diaries』の映像使用に関して、正式な謝罪文を本日、私のホームページに掲載しました。 当事者の方々との話し合いや、新バージョンの制作、関係者との調整を重ねる中で、多くの時間を要してしまいました。その間、ご心配をおかけした皆さまに心からお詫び申し上げます。 私は、事件の経緯を自らの手で記録し続けてきました。逮捕が直前で取りやめになり、その後不起訴相当とされたため、警察の証拠が手元に残らず、自分で事実を残すことが必要でした。その過程で撮影した映像の一部などが、今回の新バージョンで修正の対象となりました。 私はこの作品の監督であり、同時に性暴力の被害を受けた当事者でもあります。取材や制作にご協力くださった方々は、真実に光を当てるために欠かせない存在でした。このたび、寛大にご対応くださったご本人およびご家族の皆さまに、深く感謝しています。 この経験が、取材や制作の中で出会う声に向き合う姿勢をもう一度見つめ直すきっかけとなりました。今後も、一つ一つの出会いを大切にしながら、対話と表現を続けていきたいと思います。