【現地警鐘レポート】東京・湯島で横行する″日中連携″昏睡ぼったくり…その恐ろしすぎる「最新手口」

ある朝、都内に住む60代男性・瀬田健二さん(仮名)は、クラクションの音と激しい頭痛で目が覚めた。東京・上野駅から歩いて10分ほどの湯島の繁華街にある駐車場内で眠りこけていたところを、車を停めに来た利用者に起こされたのだ。 だが、瀬田さんには駐車場に至るまでの記憶がなかった。覚えているのは、湯島で友人と酒を飲み、終電前に別れたところまで。 慌てて財布の中を見ると、紙幣がすべてなくなっており、代わりにATMの利用明細が1枚入っていた。 「なんと、その日の未明に50万円を引き出していたのです。スマホの歩数計アプリの歩行ルート履歴によると、湯島の雑居ビルに午前1時から午前3時くらいまで滞在し、その後、コンビニに行ってキャッシュカードで50万円を引き出したようです」(瀬田さん) ’20年のコロナ禍以降、湯島では「昏睡ぼったくり」が横行している。路上の酔客に客引きの中国人女性が「始発まで飲み放題3000円でいいよ」などと声をかけて店に誘い、泥酔させた挙げ句、高額の料金を請求。持ち合わせがなかった場合は近くのATMまで客を連れて行き、現金を引き出させる――ニュース等で「昏睡ぼったくり」を知っていた瀬田さんは地元警察に被害を訴えたが……。 「『犯罪にあった確証がない』と言われ、被害届の提出には至っていません。雑居ビルに滞在していたことはわかっていても、どの店舗にいたのか思い出せませんし、誰にどうやってカネを取られたかも覚えていない。諦めるしかなさそうです」 筆者は、瀬田さんが湯島で歩いたルートを終電後の時間帯に辿ってみた。さぞ多くの客引きが群がってくるのだろうと見込んでいたが、筆者に声をかける者はいない。ところが、千鳥足の中年男性が一人で歩いていると、どこからともなく「彼女たち」が現れ、付かず離れずの距離で跡をつけた後、周囲に目立たないタイミングで声をかけていた。湯島で飲食店を営む江崎耕太さん(仮名)が話す。 「道路を流す車の中やビルの上階などからカモを探している人物がいて、その指示に従って彼女たちが出動するのだと思われます。以前は路上に客引きグループが常時たむろしてカモを待っていましたが、最近は警察がパトロールを強化し、路上での露骨な客引きはできなくなった」 酔っていない筆者はカモとして見られなかったのだろう。取り締まりが強まる一方、ぼったくりの最新手口は凶悪化しているという。 ◆凶悪化する手口によって死人が出たケースも… 「単に酔わせるのではなく、酒に睡眠薬などを混入させる手口が横行している。この1年、朝方の路上で倒れている酔客が救急車で搬送されるのを何度も見ました。5月中旬に湯島の路上で意識不明の状態で発見された中年男性は、その後亡くなったと聞きました。知人らしき人たちが現場に手を合わせに来ていましたね。その方々によると、警察では事故として処理されたそうです」(同前) その場所がどこなのかを聞いて驚いた。瀬田さんが、50万円を失う前に滞在したという雑居ビルの目の前だったからだ。 「そのビルには、ネット上でぼったくり被害の告発が相次いでいたスナック『X』が入居していましたが、事件後に閉店。店を根城としていた客引きたちも街から姿を消しています」(同前) Xが閉店しても、湯島にはいまだ無数のぼったくり店と客引きたちが潜んでいる。湯島の飲食店関係者が明かす。 「湯島でぼったくりを目的に活動している中国人客引きの一部は、一足先に取り締まりが厳しくなった赤羽や新橋から’22年頃に流れてきたと見られています。彼女たちは犯行の舞台となる店舗を持っていなかったため、既存のスナックやバーと組み、その店でぼったくり行為をして、収益を店側と山分けする『卓貸し』と呼ばれるシステムができた」 湯島では卓貸しによる″日中連携″のぼったくりが問題となっている。 「湯島でぼったくり目的の卓貸しをしている店舗は中国人とは限らず、日本人が経営している店舗が中国人客引きに協力しているケースも少なくありません。日本人の店では気を緩める客もいて、ぼったくり側からすれば都合がいい。 共犯関係を弱みとして握られ、中国側に経営を乗っ取られているような店舗もあるようです。店の経営者は責任者として逮捕されますが、客引きは帰国すれば逮捕されませんから」(同前) 飲酒後の夜歩きが心地よい季節だが、客引きの甘い囁きには注意が必要だ。 『FRIDAY』2025年11月7日号より 取材・文:奥窪優木

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