【AFP=時事】移民(在留外国人)問題をめぐり、多方面から批判を浴びている英政府は29日、エチオピア出身の性犯罪者を国外追放し、出国費用として500ポンド(約10万円)を与えたと発表した。 政府はまた、昨年初めにフランスから小型ボートで英国に密入国するベトナム人が急増したことを受け、ベトナムとの間で強制送還手続きを迅速化する新たな合意を締結したと発表した。英国は既に、イラク、フランス、西バルカン諸国との間でも同様の合意を結んでいる。 毎月数千人が英仏海峡を渡って英国に密入国し、注目を集めた移民による犯罪が相次ぐ中、キア・スターマー首相率いる中道左派政権はさまざまな移民関連問題で日々強い圧力に直面している。 エチオピア出身のハダシュ・ゲブレセラシェ・ケバトゥ受刑者(38)は先月、14歳の少女と成人女性に対する性的暴行の罪で拘禁1年の判決を受け、服役していた。この事件は英国各地の難民認定申請者を収容するホテル前での抗議デモの引き金となった。 ケバトゥ受刑者は先週、1か月しか服役していないにもかかわらず誤って釈放された後、約48時間に及ぶ警察の追跡捜査の末、26日に再拘束された。 内務省は、ケバトゥ受刑者を29日未明、エチオピアに強制送還したと発表した。 ■殺人罪 デービッド・ラミー法相は27日の議会で、ケバトゥ受刑者の誤釈放は「人為的なミス」と見られるが、独立した調査を開始すると発表した。 アレックス・ノリス閣外相は議会で、ケバトゥ受刑者に500ポンドを与えるという「運用上の決定」は、「他の選択肢の方が時間がかかり、費用もかさむ」ためだったと説明した。 ロンドン西郊アクスブリッジで27日、1人が死亡、14歳の少年を含む2人が負傷する刺殺事件が発生。アフガニスタン国籍とされるサフィ・ダウド容疑者(22)が逮捕された。 ロンドン警察は29日、ダウド容疑者を殺人罪1件と殺人未遂罪2件で訴追した。 内務省によると、ダウド容疑者は2020年、トラックに隠れて英国に密入国。2022年に難民認定され、永住許可を得た。 さらに29日、難民認定申請が却下されたことに腹を立て、銀行を刃物で襲撃した密入国者が、殺人罪で少なくとも25年の拘禁刑を言い渡された。 2024年に小型ボートで英国に密入国したソマリア人、ヘイベ・カブディラシュマン・ヌール被告は5月、イングランド中部ダービーのロイズ銀行支店で包丁を使った襲撃事件を起こし、客1人を殺害した。【翻訳編集】 AFPBB News