労働組合を「どんどん削る」検察官は言った 捜査は違法?きょう判決

関西の生コンクリート業界の労働組合員が、ストライキなどの行為を捜査機関に「犯罪」とみなされ、のべ約80人が逮捕された。だが、後にのべ14人に対し、刑事裁判で無罪判決が出た――。 一連の捜査について、組合側が「労働組合への弾圧だ」と主張し、国などに賠償を求める民事裁判を起こした。31日の判決で、東京地裁はどう判断するのか。 今年6月。東京地裁の法廷の大型スクリーンで、取り調べの録画映像が上映された。大津地検の検察官が、恐喝未遂の疑いで逮捕された組合員にこう語っていた。 「(組合を)きちっと削ってくださいよって話もあるわけです」 「これからどんどん削っていきます」 削る、とは何を意図していたのか。 ■組合員の大量検挙、なぜ起きた 取り調べを受けた組合員は「全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部(関生支部)」に入っていた。 生コンはセメントに砂などを混ぜた建材の一種。関生支部は、企業の枠を超えて生コン業界の労働者が個人で入る労働組合で、2018年ごろは約1300人の組合員がいた。 その関生支部の組合員が18~19年、警察に相次いで逮捕され、逮捕者はのべ81人に上った。工場からの生コン出荷を阻止するストライキや、建設現場での法令違反を指摘し業務を中断させるといった行為が、威力業務妨害や脅迫などの罪に問われた。 「一連の刑事事件で、労働組合の『団結権』を侵害する違法な捜査が行われた」。関生支部側と組合員3人はこう訴え、20年に提訴した。国(検察)や滋賀、和歌山、京都の3府県(警察)に賠償を求めた。 団結権とは、個人では力の弱い労働者が、待遇の改善などを企業と交渉するために、労働組合をつくる権利。憲法で保障されている。 また、労働組合が企業と交渉する際は、活動が業務妨害などになることもある。そのため労働組合法は、労働者の権利を守る活動であれば、暴力行為などがない限り違法とはされない、と定める。 ■のべ14人に無罪 民事裁判の提訴後、並行して進んだ刑事事件は異例の展開をたどった。 裁判所が、のべ14人に「正当な組合活動で、違法ではない」などとして無罪を言い渡した。 原告側は、一連の逮捕や起訴の背景に「組合活動への無理解」があったと指摘。そのうえで、捜査機関側が組合員への取り調べで「(組合を)削っていく」「捕まったけど組合員を続けるのか」などと発言したのは、関生支部の団結権の侵害だと主張した。このほか、原告の1人が繰り返し逮捕され、勾留が600日以上に及んだことなども違法だと訴えている。 被告の国や3府県は、原告側が問題とする発言について「真相解明のためにされた発言で、組合の弱体化を図る目的はなかった」などと反論。長期の勾留なども違法ではない、と主張している。 原告側の弁護団は「労働組合をないがしろにすることは労働者をないがしろにすること。今後、他の組合に対し、同様の大量摘発が起きないようにするための裁判でもある」と話す。(黒田早織)

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