社説:立花党首の逮捕 言動の違法性や背景解明を

デマの拡散といったネット社会の「言葉の暴力」の危険性を改めて見つめ直したい。 政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志容疑者が兵庫県の斎藤元彦知事の疑惑告発文書問題を巡り、亡くなった竹内英明元県議の名誉を毀損(きそん)した疑いで県警に逮捕された。 虚偽の情報を発信して誹謗(ひぼう)中傷したとされ、竹内氏は県議を辞職した後に死亡した。自死とみられる。竹内氏の妻は「夫の尊厳を守りたい。これ以上犠牲が生まれてほしくない」と刑事告発していた。 立花容疑者は選挙や政治活動の名の下に、交流サイト(SNS)での個人攻撃や脅迫的、扇動的な言動を続けている。違法性や意図、背景を捜査と裁判で解明してもらいたい。SNSがはらむ問題としても、社会や政治が考える必要があろう。 立花容疑者は昨年11月の兵庫県知事選で、斎藤氏を応援するとして出馬し、文書問題を調査する竹内氏ら県議会百条委員会の批判を展開した。 県警によると、直後の別の選挙演説で「竹内議員は、警察の取り調べを受けているのは多分間違いない」などと発言した上、竹内氏が亡くなった後には「逮捕される予定だったそうです」との情報を発信し、名誉を傷つけた疑いを持たれている。 県警は今年1月、この立花容疑者の発信内容を全面否定していた。 死者への名誉毀損による逮捕は異例だ。他の事件による執行猶予中で、悪質性や「罪証隠滅の恐れ」から踏み切ったという。 捜査関係者によると、立花容疑者は発言を事実と認める一方、逮捕前には、真実と信じる十分な根拠「真実相当性」があるとSNSで主張していた。 一連の発言には、日本維新の会に所属した県議から立花氏への情報漏えいがあった。竹内氏を「反斎藤の黒幕」と中傷する内容も含まれる。その関係性を含め捜査を尽くしてほしい。 立花容疑者は、民主主義の基盤となる選挙で脱法的な行為を繰り返してきた。 東京都知事選で選挙掲示板にポスターを貼る権利を事実上販売し、法規制につながった。兵庫県知事選などで他候補の当選のため立候補する「2馬力選挙」に及んだ。有権者を愚弄(ぐろう)する行為といわざるを得ない。 兵庫県知事選は、SNSで根拠不明の情報や誹謗中傷が大量に流され、投票に影響を及ぼす契機になったとされる。 SNSを通じ、選挙に出ることで資金を集めたり、閲覧数を増やして稼いだりする「選挙ビジネス」も見過ごせない。 少数与党の自民党は、N党の参院議員と会派を結成している。党首の逮捕について、高市早苗首相はきのうの衆院予算委でコメントを控えた。なりふり構わぬ数合わせに、政権党としての責任が問われよう。

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