イスラエル人入植者が集団で農地を襲撃、放火も ヨルダン川西岸

(CNN) パレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区で11日夕、数十人のイスラエル人入植者が農地に放火した。現地のパレスチナ人活動家らが明らかにした。ヨルダン川西岸では最近、イスラエル人入植者による暴力が相次いでいる。 今回の襲撃はトゥルカレムの東に位置する町で発生し、集落や乳製品工場が被害を受けた。住民の証言やCNNが入手した映像で明らかになった。CNNが入手した映像には、煙が一帯を覆い、女性たちが悲鳴を上げる中、男性らが消火器やバケツを手に消火に奔走する様子が映っている。 動画には、放火されたトラックやテント、金属製の小屋、割られた車の窓が映っていた。住民によると、パレスチナの民間防衛隊と消防隊が現場に到着したのは出火から約1時間後だった。別の住民が撮影した映像では、入植者らが丘を下って村に向かう姿が確認できる。 ヨルダン川西岸では10月中旬以降ほぼ毎日のように入植者によるパレスチナ人への暴力行為が起きており、その数も急増している。国連が発表した報告書によると、10月だけで少なくとも264件の入植者による攻撃が確認された。この件数は国連が2006年に統計を取り始めて以降で最多だという。今年のオリーブの収穫期は、こうした激しい暴力によって台無しとなった。 CNNが入手した監視カメラの映像には、入植者らが乳製品工場を襲撃し、こん棒を振り回し、駐車中の車両に火を放つ様子が映っている。工場のロゴが入った貨物トラックが焼けて煙を上げている場面もある。 イスラエル軍(IDF)は声明で、覆面をしたイスラエルの民間人数十人がパレスチナ人を襲撃し、建物に放火したという報告を受けて兵士を派遣したと発表した。パレスチナ人4人が負傷し、治療のために避難したという。治安部隊は「暴動鎮圧手段」で現場を制圧し、数人のイスラエル人を拘束したとした。入植者は兵士も襲撃し、軍用車両を損傷させたという。 イスラエル警察は「極度の暴力」の後、イスラエル人の容疑者4人を逮捕し、取り調べを行っていると発表した。 オリーブの収穫期を迎えたヨルダン川西岸地区では、ますます暴力が激化している。8日には、ベイタでオリーブを収穫していたパレスチナ人の農民らが襲撃を受け、少なくとも10人が負傷した。負傷者の中には医療関係者3人、記者4人、活動家3人が含まれていた。 IDFはCNNに宛てた声明で、この事案を認識しており、イスラエルの民間人とパレスチナ人が衝突したとの報告を受けて、兵士を派遣したと明らかにした。 近くの集落ブリンでは、イスラエル人と外国人の活動家が負傷した。この中には、イスラエル軍予備役のユバル・ベン・アリさんも含まれていた。 ベン・アリさんはCNNとの電話インタビューで、パレスチナ人が入植者によって毎日「残酷に殴打」されている映像を見て、パレスチナ人を支援するために外に出る決意をしたと語った。 ベン・アリさんは8日早朝、パレスチナ人の農場で、イスラエル人活動家7人とオリーブを収穫していたところ、少なくとも20人の覆面をした入植者がこん棒やバットを手に丘を下りてくるのを目撃した。 ベン・アリさんは「彼らがこの地域全体を『恐怖に陥れよう』としているのが分かった」と述べた。「私は彼らの前に立ち、『やめてください。そんなことをしたくはないでしょう』と言った」と話し、自身が予備役だと明かしたが、それでも攻撃は止まらなかったという。ベン・アリさんは頭部にけがを負い、軽い脳振盪(しんとう)で入院が必要になった。 IDFはCNNの取材に対し、声明で、イスラエルの車両への投石の報告を受け、ブリンに兵士を派遣したと述べた。「イスラエルとパレスチナの民間人が負傷し、治療のために避難した。IDFはあらゆる暴力行為を非難し、地域の安全と秩序を維持するための活動を続ける」 ベン・アリさんは、現場に到着した兵士が攻撃を止めなかったと語った。多くのパレスチナ人や活動家が他の事案でも同様の訴えをしている。

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